肝胆ブログ

かんたんにかんたんします。

「漢詩百首 日本語を豊かに 感想」高橋睦郎さん(中公新書)

 

中公新書高橋睦郎さんの「漢詩百首」が、漢詩の味わいや各詩人のプロフィールに気安く親しめる良著でかんたんしました。

日本人・日本語の歴史に対して、漢詩がいかに重要な役割を果たしてきたかを論じてくださっている熱量も素敵ですね。

 

www.chuko.co.jp

 

f:id:trillion-3934p:20210429154158j:plain

 

返り点と送り仮名の発明によって、日本人は、ほんらい外国の詩である漢詩を自らのものとした。その結果、それを鑑賞するにとどまらず、作詩にも通暁する人物が輩出した。本書は、中国人六〇人、日本人四〇人の、古代から現代に及ぶ代表的な漢詩を精選し、詩人独自の読みを附すとともに、詩句の由来や作者の経歴、時代背景などを紹介。外国文化を自家薬籠中のものとした、世界でも稀有な実例を、愉しみとともに通読する。

 

 

中国人の漢詩60首、日本人の漢詩40首を、現代語訳や各詩人のプロフィールを交えて解説いただける内容になっています。

 

以下、個人的に気にいった漢詩のご紹介を。

なお、ブログだとルビがなくて分かりにくい箇所があるので、原著と一部漢字を変えていて、正確な引用になっていない点はご容赦ください。

 

 

 

力 山を抜き 気 世を蓋う、時に利不ず 騅逝かず。騅の逝かざる奈何す可き、虞や 虞や 若を奈何せん。

垓下の歌 項羽

わが力は山さえもひき抜き、気は世を蓋うほど。しかし時はわれに利せず、(愛馬の)騅は逝こうともしない。騅が逝かないのをどうすればいい? 虞よ虞よ、おまえをどうすればいい?

 

有名な項羽さんの詩ですね。

国史が好きな方にはおなじみだと思います。

項羽さんは様々な形で描かれていますが、個人的には本宮ひろ志版が好きです。

 

 

 

楼船を汎べて汾河を済り、中流に横たえて素波を揚げ、簫鼓鳴って悼歌を発す。歓楽極まって哀情多し、少壮幾時ぞ、老を奈何せん。

秋風の辞 漢武帝

二階建の船を浮かべて汾河を渡るさなか、流れのただ中に横ざまに白波をたて、縦笛と鼓が鳴り響き、舟歌がおこる。歓び楽しみが極まるところ、哀しみの情もさかんだ。若き日も盛りのときもどれほどつづこうか、かならずくる老いをどうのがれようぞ。

 

武帝さんの漢詩です。

宮廷詩人の代作かもしれないとのことですが、大事業を成し遂げた栄華と忍び寄る老いの哀しみとの対比が壮大でいいですね。

 

 

 

夜中 寐る能わず、起坐 鳴琴を弾ず。薄帷 名月に鑒り、清風 我が襟を吹く。

詠懐詩 阮籍

夜中、寝付かれないままに、起きあがって坐り、鳴琴をつま弾く。薄い帷は明るい月に照らしだされ、清すがしい風が私の襟もとを吹く。

 

竹林の七賢のひとり、阮籍さんの詩です。

内省的というか、自分一人で深く完結している感じがいいですね。

 

 

 

吾が家に嬌女あり、皎皎として頗る白皙。小字を紈素と為し、口歯自ら清歴。

嬌女詩 左思

我が家におちゃめがいる、透きとおるほどまことに色白。幼名を紈素といい、口も歯もまったくはきはきとよくしゃべる。

 

3世紀ごろの詩人、左思さんの詩。

娘大好きな内容の歌で、非常に共感が湧きます。

 

 

 

葡萄の美酒 夜光の杯、飲まんと欲すれば 琵琶馬上に催す。酔うて沙場に臥す 君笑う莫れ、古来征戦 幾人か回る。

涼州詞 王翰

葡萄をかもした美酒、(それを満たした)夜光る玉の杯。わたしが飲もうとすると、馬上で琵琶を弾いてくれようというのか。酔いつぶれたら砂の庭に寝てしまうぞ、君どうか笑わないでくれ。古よりこのかた、戦いに往ったものたちのうち、いったい幾人が帰ってこられたというのだ。

 

唐の詩人、王翰さんの詩。

拡張する大帝国の気風を踏まえ、辺境遠征を題材にしています。

酒、琵琶、馬上とくれば、上杉謙信さんなんかにも似合いそうな漢詩ですね。

 

 

 

年々歳歳 花相似たり、歳歳年年 人同じからず。言を寄す 全盛の紅顔の子、応に憐むべし 半死の白頭翁。

白頭を悲しむ翁に代る 劉希夷

くる年くる年 花は同じくわかわかしいが、めぐる歳めぐる歳 人は様変わりとしよっていく。聞いてくれ、今を盛りの若い君たち、この死にかけの白髪じじいをふさわしく憐れんでくれ。

 

以前も取り上げたことのある、好きな漢詩です。

「中国古典名言辞典【新装版】 感想と好きな言葉10選」諸橋轍次さん(講談社) - 肝胆ブログ

 

表現的には真逆ながら、花の色は移りにけりなの和歌と似たような心境を表しているのが面白いですよね。

 

 

 

独り坐す 幽篁の裏、琴を弾じ 複た長嘯。深林 人は知らねども、名月来って相照らす。

竹里館 王維

奥深い竹やぶのうち ここに独り坐り、琴のことを弾じ またいきながに歌う。深い林(のおくの趣)を(世の)人びとは知らないが、明るい月がやって来て(私の心と)照らし合う。

 

詩仏 王維さんの詩です。

王維さんは詩も画も上手で性格も穏やか、大変素敵ですね。

それにしても中国の詩人は竹林が好きであります。いかにも美しい漢詩の世界という感じでいいなあと思います。

 

 

 

千山 鳥の飛ぶこと絶え、万径 人蹤滅す。孤舟 蓑笠の翁、独り釣る寒江の雪。

江雪 柳宗元

(見渡す限り)千の山やまに鳥の飛ぶすがたはなく、万の小道から人の足跡も消えた。ただひとつの小舟、蓑笠の年寄りが、ただひとり釣っているのは冬の川面の雪か(魚か)。

 

唐の大詩人、柳宗元さんの詩。

まさしく山水画の世界という印象ですね。

 

 

 

閑林に独座す草堂の暁、三宝の声 一鳥に聞く。一鳥声有り人に心有り、声心 雲水 倶に了々。

後夜仏法僧鳥を聞く 釈空海

静かな林の草(深い僧)堂に独り坐して暁をむかえる。(仏・法・僧)三宝の声が一羽の鳥から聞こえる。一羽の鳥に声があり人には心があるゆえ、その声とその心 行く雲も流れる水も ともに了々とあきらかなのだ。

 

ここから日本人です。

空海さんの漢詩

有名な高野山の「ブッポーソー」と鳴く鳥の声を題材にしていますね。

読みくだしたときの「いっちょうこえありひとにこころあり」という箇所のリズム感が好きです。

 

 

 

夏来りて偏に愛る覆盆子、他事又無く楽しび窮らず。味は金丹に似て旁え美を感え、色は青草を分けて只紅を呈ぶるのみ。

覆盆子を賦す 藤原忠通

夏が来てもっぱら愛でるのはいちごの実だ。他の事はなにも無くこの楽しみは終わりがない。その味ときたら(霊薬)金丹にそっくりでそのくせ美味しく、その色はといえば青い草を分けてただ紅を帯びているばかり。

 

文字だけを見ると読み下しにくいですね。

なつきたりてひとえにめずるいちごのみ、あだしごとまたなくたのしびきわまらず。あじわいはきんたんににてかたえうましきをおぼえ、いろはあおくさをわけてただくれないをおぶるのみ。

読み下すと、ただただ苺大好きと訴えていることがよく分かります。

 

平安時代末期の保元の乱等で知られる藤原忠通さん。

こんなにストロベリーな嗜好と詩才をお持ちと知らなかったので意外な魅力でした。

 

 

 

生死憐むべし雲の変更、迷途覚路 夢中に行む。唯留むるは一事 醒めて猶記ゆ、深草閑居 夜雨の声。

閑居偶作 道元

およそ生き死にの憐れむべきことは雲の移り変わりさながら。迷いの道も悟りの道も夢まぼろしの中を進む。そのなかで醒めてなお留め覚えていることはただ一つこんな事か、ここ深草に閑居しての夜ふけてきく雨の響き。

 

永平寺を開いた禅僧道元さん。

こうした表現での仏教的世界観が好きです。

 

 

 

楊柳の花は飛んで江水に流れ、王孫の草色は芳洲に遍し。金罍の美酒葡萄の緑、青春に酔わざれば愁を解かざらん。

春日の作 新井白石

楊柳の花は飛んで大川の水に流れ、つくばねそうの若い色は芳しい中州に満ち満ちている。黄金の甕にあふれんばかりの美味い酒は葡萄の緑いろ、このうららかな春の日に酔わなければ 愁いを解き放つことはついにできまい。

 

江戸時代初期に幕政を担った新井白石さん。

真面目で固い人物像のイメージでしたが、こんなにおおらかな詩をつくってはるんですね。プライベートは親しみやすいタイプだったのでしょうか。

 

 

 

袖裏の毬子 値千金、謂言るに好手等匹無し。箇中の意旨 若し相問わば、一二三四五六七と。

毬子 大愚良寛

袖の裏の手毬はわしの宝物、わしほどの毬つき上手は他になかろうよ。心の思いを問いなさるなら、一二三四五六七とこたえるほかなかろうさ。

 

越後が生んだ能書家の良寛さん。

子どもと遊ぶのを愛したことで知られるお人柄がよく表れている漢詩で、ひいふうみよいつむなな、という開けっぴろげ感も素敵ですね。

 

 

 

螙冊紛披して煙海深し、毫を援り下さんと欲して復た沈吟。愛憎枉げんことを恐る英雄の迹、独り寒灯の此の心を知る有り。

修史偶題 頼山陽

虫食いの本どもは乱れ散らかり(歴史の)もやたちこめる海は深すぎるので、筆を取っていまや下ろそうとしながらまたも書き悩む。みずからの勝手な思いで英雄たちの歩いた道を曲げてしまうことを恐れる、このなやましい思いを知るのはただ寒い夜の灯のみだ。

 

江戸時代後期の大歴史作家頼山陽さん。

頼山陽さんとしても、悩みながら歴史に向き合い、苦心しながら日本外史等を執筆されていたことがよく分かる漢詩であります。

三好家ファン等からはおいこのやろうと思われがちな頼山陽さんですが、その創作者としての腕前はやはりすさまじく、川中島合戦の漢詩なんか素晴らしいですもんね。

史実を捻じ曲げるほどの文章力、とでも言いましょうか。

 

 

 

水煙漠漠として望めども分ち難し、月は只だ関山笛裏に聞くのみ。吾に剪刀有り磨けども未だ試さず、君が為に一割せん雨夜の雲。

十三夜 原采蘋

かわもやがぼんやりとたちこめて見渡そうとしてもはっきりしません、月のようすはもっぱら(名曲)「関山」をふく笛の音のうちに聞きえがくほかないようです。わたくしははさみを持っていて研ぎあげてはあるもののまだ試してはおりません、あたなの為に雨後の雲を一おもいに切りさいてさしあげましょうか。

 

江戸時代後期の女性、原采蘋さんの詩。

シャープな知性を感じる秀作だと思います。

 

 

 

今来も古往も事は茫茫、石馬声無く抔土荒る。春は桜花に入りて満山白く、南朝の天子も御魂香らん。

芳野懐古 梁川星巌

いまもむかしも物事は茫々とあきらかでなく、(陵墓の前の)石の馬はものいうことも無く盛り土は荒れるにまかせている。それでも春も桜花のころに入ると山じゅうが白くなり、このときばかりは南朝の天子の御魂も香りにみたされやすらかだろう。

 

江戸時代後期の詩人、梁川星巌さんの詩。

幕末志士との繋がりでも知られていますね。

尊王的な気配を帯びつつも、その視点はやさしい気持ちから生じているような味わいの詩で、いいと思います。

 

 

 

地涯 白雪を呼び、青夜 孤狼を発す。幻化 星歴を司り、詩魂老いて八荒。

庚戌元旦偶成 鷲巣繁男

はるかな地の涯はまっ白な雪を呼び、青い夜はひとりの狼を走らせる。ひとは幻と化して星の暦を司り、その詩魂は老いさらばえて八(方)のくにざかいをさまよう。

 

昭和の詩人、鷲巣繁男さん。

漢詩らしい孤独な味わいと、現代的な幻想性とが融合した、秀逸な作品のように感じます。

鷲巣繫男さんの作品、恥ずかしながらほとんど存じあげないので、これを機に勉強したくなりますね。

 

 

 

以上、この記事では作品の紹介だけに留めますが、本の中には、漢詩がいかに日本の重要な場面場面で人口に膾炙してきたかですとか、漢字・漢詩の導入がいかに日本語を豊かにしてきたかですとかを取り上げてくださっていますので、そういった領域に関心がある方にとっても面白いと思いますよ。

 

それにしてもあらためて漢詩を学んでみますと、歴代詩人方の「歯に衣着せずお上を批判して左遷される」スピリットや、音韻の巧みな使いっぷり等を見るに、あんがいラップなんかとフュージョンしてそのうち現代カルチャーの中でルネサンスされそうな因子を感じなくもないですね。

さいきん、モンゴルではヒップホップが人気と聞きますし、21世紀中ごろにはアジア独特の音楽×文芸が誕生していくのかもしれません。

 

 

豊饒な漢詩文化が、豊饒な現代文明に繋がっていきますように。

 

 

 

信長の野望20XX「寿桂尼の追憶 感想」

 

20XXで花蔵の乱イベントが実装され、個人的に今川家で一番好きな武将である岡部親綱さんが登場・活躍されていてかんたんしました。

 

↓「寿桂尼の追憶」実装リリース

nobu201x.gamecity.ne.jp

 

 

以下、ネタバレを含みますのでご留意ください。

攻略に役立つ情報はありません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オープニングが急展開過ぎてうっかり笑ってしまいました。

f:id:trillion-3934p:20210425134625p:plain

 

寿桂尼さんの愛息今川氏輝さんが突如お亡くなりになり、今川義元さんと今川良真(玄広恵探)さんによる後継者争い「花蔵の乱」が始まるという流れですね。

 

 

 

ストーリーはオーソドックスに20XXらしい展開で事件が解決します。

 

かさねさんの活躍(物理)場面も板についてきていて何より。

f:id:trillion-3934p:20210425135049p:plain

 

 

 

 

今川家は桶狭間や氏真さん時代が取り上げられがちで、義元さん時代の初期がゲーム等で着目されるのはレアですから嬉しいですね。

 

 

20XXにも登場できた今川良真さん。珍しい星2呪術師であります。

f:id:trillion-3934p:20210425134910p:plain

f:id:trillion-3934p:20210425134919p:plain

 

 

 

個人的に登場してくれて一番嬉しかったのは岡部親綱さん。

f:id:trillion-3934p:20210425135239p:plain

f:id:trillion-3934p:20210425135252p:plain

f:id:trillion-3934p:20210425135303p:plain

f:id:trillion-3934p:20210425135316p:plain

 

珍しい星2覇道者です。

本家から流用されている顔グラも渋くていいですね。

(本家野望での能力パラメータ、もっと評価してほしいです)

 

 

岡部親綱さんは今川家の有力家臣岡部家の方で、花蔵の乱を今川義元さん勝利に導いたことで著名です。

20XXで大人気の岡部元信さん、あるいは人質時代の徳川家康さんへ親切にしたことで知られる岡部正綱さんの親世代くらいな方だと思われますが、この頃の岡部氏系図は私にはよく分かりません。彼らいずれかの父親なのかもしれないし親戚のおじさんなのかもしれない。

 

花蔵の乱は細部のニュアンスに諸説あるそうでして、(当イベントと違って)寿桂尼さんが玄広恵探さん方についたとか、あるいは寿桂尼さんが玄広恵探さん方に拉致られたとかで、今川家相伝の「往書(重要書類)」が玄広恵探さん方に渡ってしまい。

このままでは今川義元さんの正統性が揺らぐ、ヤベェ、となったところ、岡部親綱さんが速攻で玄広恵探さん方を撃破し、しかも「往書」を無事に取り返してきてくれたということで。

 

今川義元さんの家督を見事に安定させる大活躍を遂げた岡部親綱さん、イケてるなあとほれぼれいたしますね。

「奪われた宝物を取り返す」というミッションは非常に難易度が高い(基本的に焼失したり水没したり逃げられたりする)ものですから、それだけに三種の神器を取り戻した赤松家再興軍ですとか、この岡部親綱さんですとかはロマンがあって好きです。

 

なお、後に岡部元信さんも今川義元さんの首を取り返してきてくれる訳でして、今川家にとって岡部一族が得難い「奪還屋(ゲットバッカーズ)」であることは言を俟ちません。

本家信長の野望でもそういう点をおおいに愛でてほしいと思っている次第であります。

 

 

 

イベントに戻りまして、追憶イベントの結末が余韻あってよかったですね。

 

いつも義元さんのことを心配している寿桂尼さん。

f:id:trillion-3934p:20210425142123p:plain

 

義元さんは寿桂尼さんの実子ではないよ説が盛り上がっていますけれども、それはそれ。寿桂尼さんはいつも今川家のことを想っていると考えたいところです。

 

 

一方、長じて案の定慢心が見られる義元さんもかわいい。

義元さんの星5グラは絶妙の表情だと思います。

f:id:trillion-3934p:20210425142533p:plain

 

この後は史実ルートを辿るのか、桶狭間異聞ルートを辿るのか分かりませんが、寿桂尼さんが「追憶……過去を思い出し、やり直したい」フォーカスは桶狭間に当たっているでしょうから、個人的には桶狭間異聞的な流れに進んで義元さんが無事に生還できたのだろうよかったね今川家、と想像しております。

 

 

 

小少将さんといい、追憶イベントいいですね。

短編ながら味わいに富んでいて。

 

信貴山城からありし日を想う「松永久秀の追憶」イベントも実装されますように。

大志イベントでも爆死しながら追憶していましたしね。 

 

 

 

 

「草枕 感想 那美さんは男性向け恋愛コンテンツの一原型ではないか」夏目漱石さん(青空文庫)

 

青空文庫夏目漱石さんの草枕を再読しましたら、昔読んだときは高尚な芸術論的作品のように思えたのに、今読んだら「これは一種のTo Loveるとして読んだ方が面白いのではないか」という風に思えまして受容体たる己の精神的変化にかんたんしました。

 

www.aozora.gr.jp

 

 

有名な作品ではありますが、取っつきづらい内容なので読んだことがある人はあんがい少ないかもしれません。

 

あらすじとしては、

画家の主人公が温泉に行きまして、出戻りお嬢様の「那美さん」や床屋や寺の住職と交流したり、那美さんの従弟の出征を見送りに行ったりする、

というだけの流れです。

 

物語としての明瞭な筋はなく、何かの事件を解決したりとか那美さんと恋愛関係になったりとかはありません。

主人公が脳内で複雑な芸術論を考えまくるパートと、一転して軽快な会話パートとを読み進めてみようという作品であります。

個人的には夏目漱石さん独特の格調高い風景描写やテンポの良い会話描写がけっこう好きです。

 

 

 

主人公は冒頭の有名な文章

智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。

 

で端的に表れているように、近代的な都市文明、更に言えば「人情」そのものに倦んでいるやれやれ系の意識高いキャラクターです。

人情渦巻く都市から離れて、人っ気の少ない山深き温泉宿へ避難してきた感じですね。

画を描きに温泉場に来たはずが特に何をするでもなくぷらぷらしている辺り、自分に対する言い訳が上手いタイプでして、明治時代の読者よりもあんがい現代の読者の方が親近感を覚えるかもしれません。

 

 

一方、ヒロイン?の那美さんは温泉宿のお嬢様で、

  • 京都に好きな男がいたが
  • 地元の金持ちの男と結婚し
  • 結婚相手が没落したので実家に帰って来た
  • 周りからは薄情とか頭おかしいとか噂されている
  • 美人で
  • 巨乳で(乳が湯にふっくらと浮かぶ)
  • ほほほほホホホホと笑う

 

というキャラクターでございまして。

 

 

素直に小説を読むと、画の題材としての那美さんのあり様、西洋的芸術では表現し得ぬ那美さんの表情……的な芸術論的テーマを体現するような人物なのですけれども。

あらためて草枕を読んで、芸術論的なパートをすっ飛ばして主人公と那美さんの絡みだけに注目すると……

 

  1. 温泉宿に向かう途中、茶店で那美さんの噂話を聞く①
  2. 温泉宿初日の深夜、外で歌っている那美さんの姿を目撃する②
  3. 主人公が眠っている部屋に那美さんが入ってきた気配がある③
  4. 翌朝の風呂上り、那美さんが突如現れ濡れた身体に着物をかけてくれる③
  5. 温泉宿の下女から那美さんの噂話を聞く①
  6. 那美さんとアートな会話をする④
  7. 床屋と小坊主から那美さんの噂話を聞く①
  8. 那美さんが(嫁入り時の)振袖姿をちらりと魅せてくれる②
  9. 風呂に入っていたら那美さんが入ってくる③
  10. 那美さんと文学な会話をする④
  11. 那美さんから「身投げして往生した姿を画に描いて」と頼まれる②
  12. 馬子から那美さんの先祖に関する噂話を聞く①
  13. 那美さんが別れた夫と会っているのを目撃する⑤
  14. 那美さんと画の題材としての会話をする④
  15. 那美さんが別れた夫に向けた「憐れ」の表情を目撃する⑤

 

という流れになりまして。

 

整理すると、

 ①ヒロインに関する噂話

 ②ヒロインの神秘的な姿(からかわれている感もあり)

 ③ヒロインとのセクシーなイベント

 ④ヒロインが自分に理解や興味を示してくれる

 ⑤ヒロインが普段見せない表情(嫉妬要素もあり)

 

という要素がバランスよく散りばめられていることが分かりますね。

 

しかも、男性側は基本的に受け身で、温泉宿に滞在しているだけで那美さんイベントが次々に発生してくれるという状態なのです。

これは草枕メモリアル。

恋愛小説ではないんですけど、構成要素だけを抽出すると、現代の男性向け恋愛コンテンツとすごくフックが共通していると思いませんか。

たぶん明治時代の男性読者も、読んだ感想としては「温泉行ってみようかな」「那美さんいいよね……」「続きを書け」「つぶさに書け」あたりが大勢を占めていたんじゃないかなあと。

 

あんがい夏目漱石さんとしても、ご自身の経験や考えている事柄を様々詰め込んだ結果、もともと頭がいいだけにこのような格調高い文化芸術論的な作品になっちゃっただけで、ベースは「露天風呂でうっかり男女が遭遇しちゃうジャンル」への熱いパッションを籠めた作品だったりするのかもしれない。

三四郎」でも風呂に女性が入ってくる描写があった気がしますし、ていうか夏目漱石さんの実体験でもそういう話があったそうですし、これ系のシチュエーションもの好きでしょ? 感がすごいぞ。

 

 

草枕は一見難解で真面目な作品でありながら、内容(の一側面)は現代の男の子ウケする要素がふんだんなので意外と面白いんだよさすが夏目漱石さんということで。

 

昔「こころ」が榎本ナリコさんの手でコミカライズされたことがありましたし、同じように「草枕」もそのうち(セクシー面含め)画力と表現力の高いコミカライズがなされますように。

 

 

 

「じゃりン子チエ 文庫版15巻 感想 お好み焼き屋のオッちゃん(百合根)の火力マシマシ」はるき悦巳先生(双葉文庫)

 

じゃりン子チエの文庫版15巻、ギャグのキレが高い巻でかんたんしました。

脂がのっている時期というやつですかね。

 

www.futabasha.co.jp

 

f:id:trillion-3934p:20210417104300j:plain

 

 

15巻に載っているお話は次のとおりです。

 

  • テツに客は来ない
  • 商売繁盛ゲン直し
  • テツの白星ホルモン
  • さぁ勝ち越しだ
  • エイハブの逆襲①
  • エイハブの逆襲②
  • エイハブの逆襲③
  • エイハブの逆襲④
  • ユニフォームの品切れ
  • 黒シャツパワー
  • 黒シャツの群れ
  • 黒シャツ騒動お忘れ会
  • 梅雨の出前「ラーメン一つ」
  • 梅雨の出前「ラーメン三つ」
  • 「リメンバーヘルクラブ」
  • 男は黙って「ばくだん」!?
  • 堅気屋突撃
  • フルチン・カブ
  • 暑い夏のすごし方
  • 即席太極拳
  • 早朝氷食べ放題
  • 呪いのパッチワーク
  • お化け退治
  • それぞれの反応

 

以下、ネタバレを含みますのでご留意ください。

 

 

 

 

 

 

 

内容としましては

テツが真面目に働き出したら力士のゲン担ぎで大繁盛する話、

巨大猫モービーディックと小鉄・アントニオジュニアの戦い、

コケザルのしょうもない銭稼ぎ、

地獄組再び、

おバァはんのお化け退治、

等々が収録されています。

 

全体的にギャグの勢いがよくて満足度が高い感じです。

 

 

主な登場人物の名ゼリフを紹介しますと。

 

チエちゃん

ハッキリゆうとくけどな

身内以外の客が来て初めて働いてるてゆえるんやで

 

辛辣ゥ!

おジィはん相手にホルモンを焼いているテツにこのセリフ。

小学五年生にして年季の経た商売人らしくなっているのが実にたくましいっす。

 

 

ウチ

テツのこと考えんですむのは学校に居る時だけなんやで~~

常識あんのかオッちゃん学校に来て…

ウチ爆発するのおさえてるんやで~

 

授業中、テツのことで相談に来たヤクザを追い返すチエちゃん。

たいそうな迫力ですが不憫でならない感じもしますね。

 

 

 

テツ

ド…ドアホが

ワシをタダのホルモン焼屋と思うなよ~~

 

力士のゲン担ぎでテツのホルモン焼屋は大繁盛。

はじめは喜んでいたテツも、もともと働く意欲が低いのでそのうち疲れ果ててしまい。

幕内力士3人を闇討ちして自ら繁盛騒動にピリオドを打つのでした。

 

……幕内力士3人に重傷を負わせるってバキ道の主要闘士並みですね。

 

 

 

ヨシ江はん

宿題ですか!?

宿題やったらお母はん手伝えませんなぁ

 

チエちゃんとヒラメちゃんに洋裁を教えてくれるという話だったものの、宿題なんだったら自分たちでやりなさいと突き放すヨシ江はん。

趣味なら手伝う、勉強なら自分でやらせる。

こういう教育スタイルも筋が通っていていいかもしれません。

 

 

 

おバァはん

これを着て…

それから頭を…

どぉだすこんなもんで

お化けとどっちがこわいか勝負ですわ

 

潰れた生地屋に夜な夜な出没するお化けに対して、自分もお化けの格好して殴り込むおバァはん。

結果としてお化けの正体はしょうもない陰謀だったのですが、おバァはんの無駄に高い迫力がキレッキレで愉快なお話です。

 

 

 

テツ

ヒラメー

ワシや

もぉなにも心配することないどー

明日からワシも一緒にやったるからなぁ

そやからもぉドンくさいことなんか気にせんでもええどー

 

諸事情あって自分のドンくささに落ち込むヒラメちゃんへ、彼女の家の外からデカい声で励まそうとするテツ。

動機は立派だったんですけど、ヒラメちゃんがひっくり返ってしまう結末に。

 

 

 

小鉄&アントニオジュニア

アントニオ「ヒラメちゃんランランランゆうだけでも調子はずれてるで」

小鉄「こ…こら失礼なことゆうな」

 

人間を観察してニヤニヤ笑う若猫と、たしなめるオッサン猫。

アントニオは毎々はねっ返り者でかわいいです。

酒を飲み過ぎて腰が抜けるアントニオもかわいい。

(※猫にお酒を飲ませてはいけません!)

 

 

 

ヒラメちゃん

そやけど周のオッちゃんのゆうてたことほんまやわ

そやから基本のこぉゆうハズ押し

ウチあのやり方で兄ちゃんと相撲取ったんやけどニ十回やってニ十回とも問題にならんと勝ったもん

 

周センセに相撲を教えてもらって、まんざらでもないヒラメちゃんがかわいい。

彼女は周りの大人たちから愛されていていいですね。

 

 

 

お好み焼屋のオッちゃん(百合根)

おまえ相手に日本酒じゃまわりが遅いわい

これからはウイスキーで即 人間やめるんじゃ

うるさいわい!!

ニャオニャオニャオニャオゆうんやないわい

男はこぉゆう時は黙って酒呑むしかないんじゃ

そのために神さんは酒を発明してくれたんじゃ

ワシを素人やと思とるな~~~

ワシは悪酔いのプロやど~~

どいつもこいつも皆殺しじゃ~~~

 

力士の騒動や地獄組の騒動に巻き込まれたり、

チエちゃんに酒の中身を「ばくだん」に変えられたりして、

いつも以上に荒れ狂うオッちゃん。

 

この方に火がつくとテツですら逃げるしかない訳ですが、寿命は確実に縮んでそうで心配になります。

ふだんは気のいいオッちゃんなだけに。

でも、この両面性がキャラクターとして愛しいんだよなあ。

 

 

 

 

 

変わった新キャラに頼ることもなく、いつものメンツでいつも以上に盛り上がっている巻というのもいいものですね。

 

早くコロナを克服して、この巻で描かれたような春先に力士がうろつく大阪の風景が戻ってきますように。

 

 

 

「じゃりン子チエ 文庫版14巻 感想 掛け合いが楽しい巻」はるき悦巳先生(双葉文庫) - 肝胆ブログ

「じゃりン子チエ 文庫版16巻 感想 ヒラメちゃん最高やなとなる鉄下駄編」 - 肝胆ブログ

 

 

「アイデンティティが人を殺す 感想」アミン・マアルーフさん / 訳:小野正嗣さん(ちくま学芸文庫)

 

アイデンティティが人を殺す」というエッセイを読んでみたところ、まこと現代世相にフィットした考察や意見が記されていてかんたんいたしました。フランス語の原文には触れていませんが、小野正嗣さんによる訳もすごくいい気がいたします。

このテキストは、高校生の現代国語とか、大学一般教養の題材とかに使うと今後の世界を生きる若者的にもいいんじゃないかなあ。

 

www.chikumashobo.co.jp

 

f:id:trillion-3934p:20210413192102j:plain

 

 

著者アミン・マアルーフさんの作品は、前に「アラブが見た十字軍」を読んだことがあります。

「アラブが見た十字軍」アミン・マアルーフさん / 訳:牟田口義郎さん・新川雅子さん(ちくま学芸文庫) - 肝胆ブログ

 

かの本も著者の高い知性やフェアな感性を感じることができる名作でしたが、この「アイデンティティが人を殺す」は著者の人間的な魅力・スタンスを一層感じとることができていいですね。

 

 

 

当著は200ページ弱の小品でして、

宗教や国家や民族や言語等々、アイデンティティとは?

アイデンティティが時には戦争や弾圧や虐殺を招く事実をどう思うか?

今後の世界を生きる者はアイデンティティをどう飼いならしていけばいいのか?

等々についてをテーマに、ご自身の考えを記されています。

 

著者のアミンさんはレバノン生まれ※でフランス在住、一族はイスラム教徒で自身はキリスト教徒とのことです。

レバノン・フランスという二国にまたがった経験、

イスラム教とキリスト教の二大宗教に接した経験があればこそ、

ある程度アイデンティティというものを客観的に見つめることができるのでしょう。

 

※そういえばゴーンさんもレバノン由来の人ですね。彼もレバノン・ブラジル・フランス・アメリカ・日本と、各国をまたいで活躍してきた人物です。日産事件について現在週刊漫画ゴラクで白竜さんが仕切り始めているのが楽しみでなりません。

 

 

 

アイデンティティ、宗教、民族、国家、言語……的な話をすると、一般的な日本人には馴染みにくく感じるかもしれませんが、日本人とて出身県や地域、学校、会社、方言、性癖、推し、クラスタ、界隈、右と左等々、様々な属性を帯びて日々誇ったり争ったり内輪ノリを築いたりしている訳ですので、決して縁遠くはないと思うんですよね。

さすがに人の死亡にまで繋がる事案は多くないと思いたいですけど……。

 

ので、以下でアラブとか英語みたいな話が出てきて、もう一つノリについていけない場合は、適当に「大阪生まれ」「関西弁」とかに脳内変換してお読みください。

 

 

 

それでは、本の中で印象的な箇所を引用しつつ、私見を付記していきます。

 

 

私のアイデンティティとは、私がほかの誰とも同じにはならないようにしてくれるものです。

アイデンティティは例外なく複合的なものなのです。

 

要するに、アイデンティティを問われた際、得てして人は「●●人です」「●●教徒です」となりがちですが、実際の個々人は●●人で●●教徒で●●語を話し●●出身で●●の性的嗜好を持ち●●の趣味を……と複合的な帰属先を有しているものなので。

●●人、●●教といった1つの帰属先だけに着目して「●●人はこんな奴ら」「●●教を追い出せ」とかやるのは変だよね、ということを書いてくれています。

アイデンティティってとても大事、でもそのうちの1パーツを抜き出してラベリングするのはちょっとね、的な。

 

まったく仰る通りですけど、同質性の高い日本社会でもこういう思考をしがちですから人間のバイアスってのはなかなか根深い陥穽でありますね。

 

 

 

私たちには、いちばん攻撃にさらされる帰属におのれの姿を認める傾向があります。

傷つけられたコミュニティのそれぞれに扇動者が現れるのは自然の流れでしょう。

 

「心の傷」としてアイデンティティを実感する、というのは慧眼だと思います。

誰かを攻撃している人は、相手に傷つけられていると感じているから……という場面、実際に見たことある方も多いのではないでしょうか。

 

 

 

イスラムが他の諸文化と共存しあい豊かに交流しあう巨大な潜在能力を持っていることは歴史的にはっきり証明されています。しかし昨今の歴史が示しているように、後退は起こり得るし、その潜在能力が長いあいだ、まさに潜在的な状態にとどまり続ける可能性もあるわけです。

影響というのは相互的なものです。社会が宗教を形成し、すると今度は宗教が社会を形作るのです。

近代化が非西洋地域の人々のアイデンティティに与える傷

 

「アラブが見た十字軍」にも表れていましたが、著者は自分のルーツであるアラブ社会の近代化の遅れを冷静に認識しています。

一方、その要因のひとつとして、近代化=西洋文明受容とは、自身のアイデンティティを傷つける面を孕んでいる……という点までをも冷静に見つめている視野の広さにはかんたんしますね。

この辺の記述は、日本の古代史ファンや幕末・明治史ファン、戦後復興史ファンの方々等にも刺さるものがあるかもしれません。

 

 

 

加速するグローバル化が、その反動として、アイデンティティの欲求を強くさせていることは疑うべくもありません。

不信は、間違いなく私たちの時代のキーワードのひとつです。イデオロギーに対する不信、よりよい明日というものに対する不信、政治、科学、理性、近代に対する不信。進歩の概念に対する不信、二十世紀――有史以来前例のないほどの偉業を成し遂げてきた世紀、しかし許しがたい犯罪とかなえられなかった希望の世紀――を通じて私たちが信じてきたほとんどすべてのものに対する不信。さらにまた、グローバルだとか世界的だとか地球規模だとか形容しうるすべてのものに対する不信。

「人間はもはや彼らの父親の息子というよりは彼らの時代の息子なのだ」と歴史家のマルク・ブロックは言いました。おそらくそれはいつの世でも真実だったのですが、今日ほどそれが真実になった時代はありません。

実のところ、私たちがこれほど激しくみずからの差異を主張するのは、まさに私たちがだんだんとたがいにちがわなくなってきているからなのです。

 

アイデンティティが心の傷に呼び起こされるのならば、世界が急激に変化し、自身が得てきた価値観が揺らぐ場面が増える現代こそ、もっともアイデンティティについて自問せざるを得ない時代なのでしょう。

これは、日本国内にあっても、例えば東京型文化の普及だとか、どの県でも国道沿いの店は似たような店ばかりだとかで、各都道府県らしさが揺らぐ……みたいなのがありますもんね。

 

 

 

パリやモスクワや上海やプラハの大通りを歩いていれば、確かに「ファースト・フード」という看板がすぐに目に入ってきます。しかし世界中どこでも、昔から海外に広まっていたイタリア料理やフランス料理や中国料理やインド料理ばかりでなく、日本料理やインドネシア料理や韓国料理、メキシコ料理やモロッコ料理やレバノン料理など、この上もなく多様な料理に出会る機会が増えているのもまた事実なのです。

 

著者は、グローバル化は下手したらアメリカ文化が世界を画一的に塗りつぶすことになるのではと懸念しつつ、こうした多様性の価値を見出していたりもします。

この本の原著は1998年刊行とのことで、2021年現在は当時ほどアメリカ一強でないようにも思いつつ、特定の強力な文化が世界を覆っていくのでは的な懸念はいまも議論されていますもんねえ。

 

 

言語には、アイデンティティの要素であると同時にコミュニケーションの手段でもある、という素晴らしい特性があります。この事実に目を向けていただきたいのです。だからこそ、宗教に関して私が願っていることとは反対に、アイデンティティを構成するものから言語的なものを切り離すことなど考えられないし、そうすることが有益だとも思えないのです。言語には、文化的アイデンティティの軸となる使命があるのです。そして言語的多様性には、あらゆる多様性の軸となる使命があるのです。

知へのアクセスという巨大な領域に目を移すと、事態は複雑になります。若者たちが世界の他の地域の出版物を、英語ではなくアイスランド語で読み続けられるようにするために、アイスランドはたえずコストのかかる努力を強いられています。

今日、この世界で安らぎを感じるために、そして世界を理解するために、自分のアイデンティティの言語を捨てなくてはならないようなことがあってはなりません。誰であれ、本を開くたびに、画面の前に座るたびに、議論し考えるたびに、「故郷から離れる」気がするようなことがあってはなりません。誰もが近代を他者から借用していると感じるのではなく、近代をわがものとすることができなければならないのです。

 

著者の、言語への熱い思いが伝わるパートです。

留学経験のある方とか、地方から東京の大学に進学した方とかならピンと来やすいかもしれません。

私個人としても、祖父世代が話していたマイナーな方言が滅んでいっているのを感じているので少し複雑です。

 

 

 

現在生まれつつある共通の文明から、誰ひとりとして排除されていると感じることがあってはなりません。各人がその共通の文明のなかに自分のアイデンティティの言語を、自分自身の文化を表すシンボルのいくつかを見出せるようでなくてはいけません。そしてまた各人が理想化された過去に避難するのではなく、周囲の世界にいままさに生まれつつあるものに、たとえわずかでも一体感を感じられなくてはなりません。

 

いいこと仰いますね。

自分もまた、そのように生きていけたらいいのですが。

 

 

 

 

どうでしょう。

面白そうと感じた方は、ぜひ手に取って読んでみてくださいまし。

世相にフィットした文章だと思いますので、こういう本を読んで物思いにふけってみるのも有益だと思いますよ。

 

 

アイデンティティを傷つけられた気がして誰かを攻撃しようとしている方が、本当にアイデンティティを傷つけられたのか、攻撃することがアイデンティティを癒すことに繋がるのか、一呼吸おいて考えられるような風潮が広がっていきますように。

 

 

 

「東日本の動乱と戦国大名の発展 感想」丸島和洋さん(吉川弘文館 列島の戦国史⑤)

 

列島の戦国史シリーズ、丸島和洋さんの「東日本の動乱と戦国大名の発展」が最新研究の反映を含めて密度・分量たっぷりな内容でかんたんしました。

シリーズの中でも、いい意味で戦国時代についてやや詳しい人向けだと思います。

 

www.yoshikawa-k.co.jp

 

f:id:trillion-3934p:20210410202837j:plain

 

16世紀前半、東日本では古河公方の内紛と連動した戦乱から、戦国大名の衝突へ変化する。伊達・上杉・北条・武田・今川・織田―大名間「外交」と国衆の動静を軸に、各地の情勢を詳述。戦国大名確立の背景に迫る。

 

 

 

内容をイメージしやすいよう、目次を細かめに引用いたします。

 

戦国大名の戦争と「外交」―プロローグ

    戦国大名という地域国家

    戦国大名誕生の背景

    家中の形成と外様国衆

    本巻の狙い

 

一 東日本戦国時代の転回

 1 越後における戦国大名の成立

    越後守護上杉氏の戦国大名

    守護代長尾氏の台頭

    長森原の戦いと上杉定実幽閉

    越後享禄・天文の乱

    時宗丸入嗣問題と長尾晴景

 2 伊達氏の台頭と南奧の大乱

    奥州探題大崎氏と葛西氏

    伊達稙宗の入嗣政策と陸奥守護職

    白河永正の変と南奧諸氏

    伊達氏天文洞の乱

    晴宗の勝利と稙宗の抵抗

    戦国大名蘆名氏の確立

    最上義定と寒河江

    出羽庄内と仙北

 3 北方世界とアイヌ

    謎に包まれた南部一族

    浪岡御所北畠氏

    安藤氏から安東氏へ

    蠣崎氏の成立とアイヌ

 

二 古河公方の分裂と小田原北条氏

 1 古河公方府の内乱

    長享の乱終結と下総篠塚陣

    永正の乱勃発と上杉氏

    永正の乱の展開と小弓公方の成立

    関東享禄の内乱

 2 関東に波及する内乱

    佐竹の乱終結と部垂の乱

    両那須氏の統合と宇都宮錯乱

    結城政朝と小山氏

    常陸南部の情勢

    千葉・原氏と上総武田氏の分裂

    安房里見氏の内乱と系図改竄

 3 戦国大名北条氏の誕生と関東支配の正統性

    伊勢宗瑞の小田原城攻略

    扇谷上杉氏との手切

    宗瑞の相模制圧と死去

    北条改苗字

    河越落城と扇谷上杉氏の衰退

    小弓公方滅亡と北条・里見氏の政治主張

 

三 中部・東海地方の戦国大名

 1 今川氏の遠江三河進出

    斯波義寛との抗争

    三河侵攻と斯波氏の反攻

    今川氏親の死去と寿桂尼

 2 武田信虎の甲斐統一

    信虎の家督相続

    小山田氏と穴山武田氏

    甲府開創と甲斐統一

    信虎の外交と戦争

    小笠原氏の統一

    諏訪頼満と頼重

    高梨政盛の国衆化

    飛騨三木氏と姉小路

 3 今川義元家督相続

    今川氏輝急逝と花蔵の乱

    第一次河東一乱と三河侵攻

 4 斎藤道三の美濃奪取と織田信秀の台頭

    船田合戦

    道三の父長井新左衛門尉

    道三の下剋上

    清須・岩倉の両織田氏と斯波氏

    信秀の台頭

    信秀の病

    今川勢の尾張侵攻と信秀の死去

 5 松平氏の盛衰

    永正三河大乱と松平信忠失脚

    霧の中の松平清康守山崩れ

    松平広忠復権と横死

 

四 甲駿相三国同盟の成立と長尾景虎

 1 武田晴信のクーデター

    武田信虎追放

    支持された追放劇

    諏訪頼重の滅亡

    第二次河東一乱

    武田氏の信濃経略と二度の大敗

 2 甲駿相三国同盟への道

    河越合戦と扇谷上杉氏の滅亡

    山内上杉憲政の没落

    古河公方の傀儡化

    甲駿相三国同盟の成立

 3 長尾景虎の登場と新たな対立軸の形成

    景虎家督継承

    川中島合戦の開始

 

五 戦国大名「国家」の内実

 1 領国支配と印判状

    差出検地か丈量検地か

    差出と検地

    貫高制と石高制

    所領高帳の作成

    印判の使用

    印判状の確立とその背景

    税と役

    商人の統制

    北条氏康の徳政と目安箱

    伝馬制

    撰銭令

    金山・銀山の開発

 2 家臣団統制と領国支配

    若き越後国主の悩み

    寄親寄子制

    支城制の展開

    国衆の自律性

    「郡」と「領」

    「洞」と「屋裏」

 3 大名の裁判と分国法の展開

    分国法と家法

    『今川仮名目録』

    『甲州法度之次第』

    『結城氏新法度』

    伊達氏と『塵芥集』

 4 「外交」の仕組み

    取次と副状

    和睦・同盟の作法

    幕府と朝廷

 

六 文化と宗教の伝播

 1 連歌と蹴鞠

    猪苗代兼載の晩年

    宗祇の死去と宗長・宗牧

    冷泉・飛鳥井両氏と和歌・蹴鞠

    武人画家の活躍

 2 戦国大名と宗教

    寺社の修造

    禅僧と戦国大名

    醍醐寺高僧の旅と文永寺

    「一向宗」と戦国大名

    美濃別伝の乱

 3 在地社会と戦乱・信仰

    十六世紀前半の気候

    河口湖周辺の在地社会

    村落と土豪

    土豪の活動の広がり

    足軽乱取り

    熊野三山出羽三山信仰

    伊勢・高野山信仰

    富士山信仰

 

七 進展する地域統合と大名領国の再編

 1 織田氏の分裂と斎藤道三の敗死

    武田・今川氏と斎藤道三

    長良川の戦いと道三敗死

    一色改苗字と義龍の死

    織田信勝の挙兵

 2 桶狭間合戦の衝撃

    今川義元の隠居と三河平定

    桶狭間の戦い

    松平元康の自立と「一向一揆

 3 並び立つ関東管領

    上野横瀬氏の下剋上

    長尾景虎関東管領就任

    第四次川中島合戦

    北条・武田氏の反撃

    越中大乱から謙信出馬へ

 4 東関東・東北の情勢

    下野の情勢

    常陸佐竹氏の躍進

    北条か上杉か

    伊達・蘆名同盟と佐竹氏

 

戦国大名を動かしたもの―エピローグ

    古河公方の時代とその終焉

    大名・国衆間の外交と戦争

    永禄年間への助走と統合の動き

    今川氏滅亡の遠因

    新たな秩序へ

 

あとがき

参考文献

系図

略年表

 

 

盛りだくさんですね。

詳しい方であれば、目次を見ただけで「おっ、これも取り上げてくれている」と分かるのでしょう。

 

 

高校生の歴史教科書より小学生の歴史教科書の方が分かりやすいのと同じで、当巻は分量が多く題材も広範囲に及びますので、ぱっと見では通史としての流れやテーマ性を掴みにくいかもしれません。

そういう意味では「武田家や上杉家や北条家や今川家の歴史を軽く触りたい」といったニーズには合致しないかもしれませんが、丁寧に読み進めると、メジャー大名も含めた各氏の興亡を題材に「戦国大名とは」「国衆とは」「どのような流れで戦国大名の勢力が拡大していったか」等を掴める構成になっておりますので、腰を据えて向き合うことをおすすめいたします。

 

 

当著の特徴として、冒頭で戦国大名について定義いただいているところがいいですね。戦国時代に限らず、歴史ってけっこう用語の定義に幅があったりいたしますし。

 

筆者が用いている戦国大名の定義を示しておく。

  1. 室町幕府・朝廷・鎌倉府・旧守護家をはじめとする伝統的上位権力を「名目的に」奉戴・尊重する以外は、他の権力に従属しない。
  2. 政治・外交・軍事行動を独自の判断で行う。伝統的上位権力の命令を考慮することはあっても、それに左右されない自己決定権を有する。
  3. 自己の個別領主権を越えた地域を一円支配した「領域権力」を形成する公権力である。これは、周辺諸領主を新たに「家中」と呼ばれる家臣団組織に組み込むことを意味する。
  4. 支払領域は、おおむね一国以上を想定するが、数郡レベルの場合もある。陸奥や近江のように、一国支配を定義要件とすることが適当でない地域が存在することによる。 

 

分かりやすいですね。

この定義なら、戦国大名扱いされないことがある畿内の皆様も範疇に入りそうで個人的に嬉しいです。三好家はもちろん、不明瞭な部分を孕みつつ木沢長政さんなんかも戦国大名と呼べるかもしれない。

 

 

その上で、この本では戦国大名が担った役割として

つまり戦国大名とは、軍事力という「暴力」を背景とする権力体ではあるが、戦乱の世における軍事的保護(「軍事的安全保障体制」、第五章で詳述)と、実効性を期待できる裁判と紛争調停を期待され、社会的要請で生み出された存在でもあった。

たとえば戦争時に援軍を出さないことは、戦国大名の信頼失墜に直結するから、政策に大きな影響を及ぼした。

現在では、戦国大名一般が「家臣の一揆」に支えられた権力と理解されている。

国境を越えた国衆の動向が、戦国大名の戦争・外交に大きな影響を及ぼしていた

境目地域の安定と現地国衆の保護は、戦国大名にとって大きな課題であった。解決方法のひとつは同盟締結・和睦による停戦であったが、領国拡大による境目地域の大名領国内への組み込みが取られることもあった。戦国大名の戦争は、領国拡大のためと捉えられがちだが、政治の一手段としても行われるものであったといえる。

 

という点に比重を置いて解説いただけまして、その典型例として今川氏の滅亡……同盟国北条氏への援軍(対上杉謙信さん)を優先し、三河国衆への対処に手が回らなかった故……を紹介いただけたりします。

 

矛盾するような話ですが、戦国大名とは暴力装置であり、平和機構でもあるという。

各地で紛争が頻発する世相にあっては安全保障を提供してくれる大型大名権力が要請されるのは自然な帰結でして、時代は伝統権威の後退および各国衆の内乱・統合を通じて広域戦国大名権力の登場を誘いますよ的な流れをイメージしやすい構成になっているのが満足度高いですね。

 

そのほか、本著で印象に残った点としては

  • 戦国大名のルーツは越後の上杉房定さん説。なるほど。
  • 長尾晴景さんの実像。長尾為景さんへのクーデターっぷり。
  • 個人的に縁遠い北関東諸勢力の動向に触れられて嬉しい。大乱に乗じて各家内で陣営が分裂して戦いまくるのが地獄感高い。
  • 石川高信さん=南部安信さんの弟説で記載されていますね(南部晴政さんの弟説もありますが、どっちが正しいのかは私には分かりません。南部家は謎だらけだす)。
  • 松平「清康」? 松平「清孝」が正しいっぽい?
  • 戦国大名権力の国・郡・領を単位とした連帯感=郷土意識の芽生え。
  • 結城政勝さんは分国法の執筆中に気持ちが高ぶってしまいがち。
  • 美濃別伝の乱、面白い。
  • 北畠具教さんによる今川家撃退

 

等々です。

どれも興味深いですね。

 

 

とても濃密な仕上がりですので、通史シリーズだからといってサラリと通し読みするにはもったいない、じっくり読み込みたい一冊でした。

こうした良質な書籍を通じて散りばめられた研究成果の共有化が進み、更なる深掘りを招いてくださいますように。

 

 

 

「享徳の乱と戦国時代 感想」久保健一郎さん(吉川弘文館 列島の戦国史①) - 肝胆ブログ

「応仁・文明の乱と明応の政変 感想」大薮海さん(吉川弘文館 列島の戦国史②) - 肝胆ブログ

「大内氏の興亡と西日本社会」長谷川博史さん(吉川弘文館 列島の戦国史③) - 肝胆ブログ

「室町幕府分裂と畿内近国の胎動 感想」天野忠幸さん(吉川弘文館 列島の戦国史④) - 肝胆ブログ

「毛利領国の拡大と尼子・大友氏 感想」池亨さん(吉川弘文館 列島の戦国史⑥) - 肝胆ブログ

「東日本の統合と織豊政権 感想」竹井英文さん(吉川弘文館 列島の戦国史⑦) - 肝胆ブログ

「織田政権の登場と戦国社会 感想」平井上総さん(吉川弘文館 列島の戦国史⑧) - 肝胆ブログ

「天下人の誕生と戦国の終焉 感想」光成準治さん(吉川弘文館 列島の戦国史⑨) - 肝胆ブログ

 

 

 

 

 

信長の野望20XX「平安編第4章 朝家の守護 攻略の感想」

 

信長の野望20XXに平安編第4章が実装されまして、難易度がいっそうハードになりつつ、物語の展開も急激にシリアス度が増してきてかんたんしました。

こういった好き嫌いが分かれそうな重いシナリオを下地にしていただけるなら、戦国時代の人物が平安時代に行くより、平安時代の人物が各時代に赴いた方が話が膨らんで楽しそうな気がしないでもないですね。

 

↓アップデートのリリース

nobu201x.gamecity.ne.jp

 

 

以下、けっこうネタバレを含みますのでご留意ください。

攻略に役立つ要素はほとんどありません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんとか全部S評価は取れました。

f:id:trillion-3934p:20210405215541p:plain

 

20XXになってから三好之長さんとクリスマス三好長慶さんくらいしか大規模ガチャ投資を図っていない自分としては攻略がそろそろいっぱいいっぱいです。
(しかも彼らは攻略上ほとんど役に立っていない)

之長さん副産物の芦屋道満さんや、クリスマス長慶さん副産物の塩輝さんや、たまたま手に入れた斎藤小少将さんのおかげで妖や機をなんとか倒せているような状態でこまったこまった。

「壮麗の煌」ガチャの名古屋山三郎さんに「戦国武将がよく来るキャバクラ」の青柳尊哉さん三郎ぽさを感じて思わず貴石を突っ込みかけましたが、そのうち星5三好家が来るはずという憶測を胸にかろうじて理性を保っています。

 

 

 

第4章の攻略面に少し触れると、第3章で出てきた強敵たちが再登場してくれまして難儀でしたね。

 

星熊童子さん、今度は1,000万超のダメージを与えれば倒せるようになっていたので、倒すのはかんたんなのですが1戦仕様のせいでスキルフリークとかを狙わないとS評価取りにくくて困りました。

f:id:trillion-3934p:20210405221022p:plain

f:id:trillion-3934p:20210405221038p:plain

f:id:trillion-3934p:20210405221104p:plain

 

ちなみに私の場合、なぜか耐久&兵器作戦での縦陣連鎖ジャベリンでは1,000万の壁を超えられませんでした。無属性軽減とは書いていないけど、何らかの仕様で兵器ダメージが抑えられているのかなあ? たまたま?

 

 

星熊童子さんは1例ですが、4章にもなるとボスの種族やギミックが多様化していて、自陣の構成も引き出しを多くしないとしんどいですね。

三好家縛りで全部S評価とかは私の腕では無理だす。

 

 

 

 

さて、攻略面は置いておいてストーリーです。

 

 

見どころは多く。

 

相変わらず薫り高い陰陽師コンビ&小野好古さんであったり。

f:id:trillion-3934p:20210405221806p:plain

f:id:trillion-3934p:20210405221819p:plain

f:id:trillion-3934p:20210405221840p:plain

 

というか源博雅さんに星4グラが追加されていてウケました。

たぶん20XX平安編でいちばんキャラがイキイキしているのは彼なので、そのうち星5博雅さんも実装されるのかもしれません。小説陰陽師での彼の希少性や特異性を踏まえれば、星5レアでもまったく違和感ありませんし。

 

 

 

橋姫さんも3章に続き、何かの解釈がおかしいキャラになっていてかわいい。

f:id:trillion-3934p:20210405222148p:plain

 

 

 

源頼光さんは引続きまっすぐ格好いい勇者っぷりで。

f:id:trillion-3934p:20210405222307p:plain

 

 

 

黒田官兵衛さんも、黒田家臣を召喚することで魅力が多層化したように思います。

f:id:trillion-3934p:20210405222428p:plain

f:id:trillion-3934p:20210405222507p:plain

 

とりわけ栗山善助さんの渋い洞察力がよございました。

素敵な家臣がいると殿の魅力も高まる。というのはいいものですね。

 

 

 

かさねさんも徐々に超人化が進んでいて好感度の高い活躍をされています。

既に10万パワー程度(ビビンバさん程度)の超人強度はありそう。

f:id:trillion-3934p:20210405223024p:plain

f:id:trillion-3934p:20210405223036p:plain

f:id:trillion-3934p:20210405223047p:plain

f:id:trillion-3934p:20210405223058p:plain

 

個人的には、かさねさんに対する好感度がまつりさんに並んできた印象です。

引続きいい意味ではっちゃけてキャラを掘り下げていってほしいですね。

 

 

 

 

で、そんな楽しい20XXにおいて。

 

この第4章のストーリー、実際のところはそうとう重厚でしたね。

 

20XXのシナリオはおおむね「幽魔を倒せば争いは終わって平和が訪れる、登場武将は基本的にみんないい人!」というやさしい世界なのですが……。

 

今回は

f:id:trillion-3934p:20210405223812p:plain

 

こういう「ん?」となるプロローグで始まってからの。

 

 

 

怒涛の敵キャラ事情掘り下げが……

f:id:trillion-3934p:20210405223903p:plain

f:id:trillion-3934p:20210405223920p:plain

f:id:trillion-3934p:20210405223945p:plain

f:id:trillion-3934p:20210405223959p:plain

f:id:trillion-3934p:20210405224014p:plain

f:id:trillion-3934p:20210405224034p:plain

f:id:trillion-3934p:20210405224106p:plain

f:id:trillion-3934p:20210405224126p:plain

f:id:trillion-3934p:20210405224142p:plain

 

等々を大量にぶつけられた上に。

 

 

 

源頼光さんたちが命がけで守護している朝廷は驕りまくっており。

f:id:trillion-3934p:20210405224415p:plain

f:id:trillion-3934p:20210405224429p:plain

 

 

 

芦屋道満さんはそんな社会矛盾に対して怒りを露わにし。

f:id:trillion-3934p:20210405224656p:plain

f:id:trillion-3934p:20210405224707p:plain

 

 

 

そして、安倍晴明さんは無慈悲なまでに強大な力で鬼たちを祓うという。

f:id:trillion-3934p:20210405224811p:plain

 

 

 

こうした4章シナリオ全体の構図は(坂田金時さんや安倍晴明さんを除いて)主人公サイドの登場人物は認識しておらず、ユーザーである我々だけが両方の視点からすべてを目撃し、結末として「鬼やろう」「鬼やろう」と「人々が力を合わせて悪い鬼を祓い」「京に平和を取り戻す」という一見きれいな場景を迎えることになるのです。

 

美しい都、尊い平和の裏で、救いなき敗者の気持ちはいかばかりぞ。

 

的なやつで胸をグリグリされるんですよ。

 

 

こんなにビターでハードボイルドなトスを上げられると、今後のメインストーリーへの期待がすごい上がっちゃいました。

どう平安編を決着させていくんだろう。

長篠異聞といい関ヶ原異聞といい、シリアスに舵を切った時の20XXの爆発力は凄いものがありますので、正直とても楽しみです。

 

 

 

あと、今後の楽しみといえば、

 

初の邪ボスとして登場した茨木童子さんがガチャで仲間にできるということで

f:id:trillion-3934p:20210405230048p:plain

f:id:trillion-3934p:20210405230100p:plain

 

やろうと思えば、星5武将はストーリーのボスにできるということですよね。

 

これは新三好異聞で「邪:木沢長政」が登場する奴やわ……! 

あるいは新国府台異聞で「邪:足利義明がセルフリバイブ間違いなしっすよ。

うきうき。

どの武将を星5ボスキャラにしたいか、を考えると楽しい。

 

 

 

ちなみに茨木童子さん、4章橋姫さん&朱雀門イベントを見るに、100%鬼じゃないから晴明さんの祓いサーチの対象から外れて助かったんでしょうね。

よかった。

と一瞬思いつつ、彼の立場に立てば、100%鬼でないから助かったってのは救いにならないだろうなと考え直してやはり悲しいです。

 

傷だらけの平安時代、最後に癒してくれるのは晴明さんの呪か博雅さんの笛か。

いろいろ思うところが出てまいりますね。

 

 

 

あと、ユーザーからのヘイトを集めてしまっている藤原道長さん、私としてはむしろ彼が戦国時代にやって来て、窮乏している朝廷や五摂家を見てどんな気持ちになるか描いてほしいなあとかも空想しちゃいますね。

若い頃の近衛前久さんに良からぬ影響を与えちゃったりして。

 

同様に、源頼光さん(や平将門さん)が源平や南北朝を見てどう思うか、とか。

普通に現代カルチャーを楽しむことができる安倍晴明さん&源博雅さん、とか。

 

時代が古いだけに、平安時代のキャラを他の時代に送り込むと色々面白そうです。

 

 

 

いろいろ書き散らかしましたが、20XXのストーリーがこれからも輝きを増し続けてくださいますように。

安心してゲームや課金を楽しめるよう、サービスがサスティナブルでありますように。

 

 

 

 

信長の野望20XX「3章および源頼光&四天王絵巻 攻略の感想」 - 肝胆ブログ