肝胆ブログ

かんたんにかんたんします。

「ウルトラマンガイアの感想、全話一気視聴をおすすめしたい」

 

ウルトラマンのサブスクが始まりましたので、ウルトラマンガイアを一気見してかんたんしまくりました。

あらためて、ウルトラマンガイアは傑作ですね。

かんたんし過ぎて思わずウルトラマンオーブTHE ORIGIN SAGAの地球編まで再視聴してしまいました。

 

ultra2008.jp

 

ウルトラマンのサブスク ※オーブORIGINは見れません

imagination.m-78.jp

 

 

 

以下、ウルトラマンガイアはいいぞということを書き連ねてまいります。

ネタバレを一定含みますのでご留意ください。

 

 

 

 

 

 

 

ストーリー構成がいい

全51話で縦軸ストーリーがしっかりあるにも関わらず、まったく見飽きることのない文芸完成度が何より半端ないと思うのです。

第1クールではガイアの登場とアグルの出会いを、第2クールではアグルとの対立を、第3クールではバラエティに富んだ発展編を、第4クールではアグルの復活と見事な決着をと、全体構成が巧みな上、1話1話のクオリティもしっかり高いですからね。

この完成度を真に味わうためにはダイジェスト見よりも一気見が最適だと思いますので、サブスクなりDVDなりでぜひご覧くださいまし。

 

ウルトラマンガイアは残念ながら他のシリーズ作品との繋がりが薄く、例えば「最近の作品にもゲストで登場していたから」「ガイアを知ることでこっちの作品もより楽しめる」といった要素には欠けるのですけど、「単体でしっかり面白いウルトラマンを見たい」という方には胸を張っておすすめしたいと声を大にして言いますよ私は。

 

 

 

 

 

ウルトラマンガイアが格好いい

デザインがいい。

TDGっぽさもマン兄さんっぽさもあると思います。

V1もV2も好き。

 

声がいい。

とりわけ、頭から放つ光の刃「フォトンエッジ」時の声と溜め姿勢が大好き。

ヴァッ! ブァァァァァァアアア ダァアア!!!

という野太い声がもの凄く大地の巨人っぽい。

 

投げ技がいい。

スプリーム・ヴァージョンの投げっぷりが有名ですが、実際に相手が巨体になるほど投げ技の威力は物理的に増す訳ですから、科学的設定が凝っている当作品にマッチしていると思います。

マン兄さんともレッドマンとも違う、平成プロレスっぽい投げバリエーション、投げの魅せ方がマジ盛り上がりますね。

 

投げ技に隠れがちですが、ガイアの回し蹴りも好き。

調子がいいと数回転して蹴りまくるのが好き。

打点がいちいち的確で殺意が高いところに憧れますね。

 

 

 

ウルトラマンアグルが格好いい

デザインがいい。

とりわけ目のデザイン。

通常のウルトラマンの眼は丸みのあるツリ目型なんですけど、アグルは上まぶたの線がフラットなんですよね。

m-78.jp

 

この上がフラットな目が、カメラの撮り方によって怒りを孕んでいるようにも悲しんでいるようにも冷酷なようにも優しいようにも映るんですよ。

アグル自身のドラマ性と相まって、デザイン自体が非常に効果的な演出になっていると思います。

 

アグル降臨のBGMが素晴らしい。

神秘性が高すぎます。

アレンジ版含め、アグルや藤宮さんが登場するたびに流れまくるので一気見すると脳内リフレインが止まらないこと間違いなしです。

 

41話アグル復活時の登場シーンがいい。

海を割って登場する青い巨人。

アグルの力を失い苦しむ藤宮さんが何話も続くので一気見するとカタルシスあり過ぎて脳汁が沸騰します。

この名シーンを再現したオーブ THE ORIGIN SAGA版も必見ですよ。

 

 

 

高山我夢がいい

主人公の高山我夢さん(吉岡毅志さん)の設定がいい。

頼れる兄貴キャラとか爽やかスポーツマンとかの特撮主人公っぽいタイプでなく、理系の天才キャラ。幼少時は「頭いいからって調子に乗るなよ」と近所のわんぱくボーイたちにからかわれていたというバックストーリー。

コミュ障という訳ではなく、周囲の大人や友人からいい影響を受けながら、肉体的にも精神的にも演技的にもどんどん成長していくのがいいんですよね。

後期OPになると突然バク転し始めるのも何だか分からんがとにかくよい。

 

声と話し方も味があって好き。

ガイアーーー!!!! の変身時シャウトは特に好き。

 

オーブTHE ORIGIN SAGAでは飄々とした賢いおじさんになっているのも好き。

何を相談しても適格に教えてくれるし、どんなトラブルが起きても超技術で解決してくれるので、ものすごく便利なキャラになっている気がします。

また今後のウルトラ作品にも高山我夢として再登場してほしいですね。

 

 

 

藤宮博也がいい

ライバル兼相棒の藤宮博也さん(高野八誠さん)の設定がいい。

全てにおいて主人公の先を行く男。

孤高の天才。でも誤って苦しむ脆い面あり。

クールなイケメン。でも筋トレシーンを見せつけたりラーメンをすすったりと謎のかわいいアピールを忘れない。ギャップ萌えか。

 

声と話し方も味があって好き。

自己暗示力高そうな話し方が設定に合っていると思うの。

 

主人公に対する屈折した感情、独自の正義に基づき人類に牙をむく所業、改心した後は最高の相棒として主人公を支える姿。

最終話の稲森博士との邂逅、ニュートリノのくだりはマジで感動したしマジでこの人天才やなと思いました。

 

それにしても藤宮さんは悲しんでも怒っても笑ってても妙な行動してても格好いいのがズルいですね。

オーブ THE ORIGIN SAGAの地球編では、実質的にジャグラスジャグラーの先輩でありドクターサイキの先輩でもあるというのが空手にマウント取る烈海王みたいですごい。

ガイア視聴者にとってTHE ORIGIN SAGAの高山我夢と藤宮博也はΖガンダムアムロとシャアみたいなものですから、ガイアファンは絶対見た方がいいと思います。欲を言えばもっと尺をこの二人に割いてほしかった。

 

 

 

XIG・G.U.A.R.Dの大人たちがいい

ガイアの防衛チームは人数が多い上に一人ひとりのキャラが立っていて、ストーリー上必要な役を置いといたという感じではなく、それぞれがそれぞれの人生を歩いている感じがする立派な群像劇になっているのがいいんですよ。

 

主人公の高山我夢さんが若くて素朴な演技をする分、隣にいる石室コマンダー渡辺裕之さん)、堤チーフ(宇梶剛士さん)、千葉参謀(平泉成さん)の重厚でどっしりした演技・存在感がまことに映えます。

とりわけ石室コマンダーは全編通して格好いいし覚悟が決まっているのでつい目で追っちゃいますね。この人ひとりでガイアの作品テーマを体現してはる感じがします。

 

3人一組の専門チームが複数あって、適材適所に活躍するのも凝っていて好き。

六角形のコンテナメカも、実際どうかは分かりませんが「どう見ても合理的だろ?」と有無を言わせないハッタリ説得力があって胸が高鳴ります。

チームではファルコンとハーキュリーズが好きですね。

渋いオッサンたちが好き。

 

でも、一番好きなのは梶尾リーダー(中上雅巳さん)と神山リーダー(権藤俊輔さん)の声。

「ファイター1、スタンディングバイ」「チーフがなぜ、フローターで出ていったと思いますか?」等の発声が超好き。二人とも独特の活舌で、色気を感じるんです。

私はあまり声フェチではないのですが、ガイアは好きな声が多かったです。

 

 

 

敵(根源的破滅招来体や怪獣)がいい

SF的ケレン味と豪華特撮による納得感。

ガイアの敵勢力から感じるスケール感がすごいんですよね。

そもそも根源的破滅招来体(よく分からないけどこのままだと人類と地球がヤバい)というフワッとしているのにメチャやべぇと一瞬で理解できるネーミングがすごい。 

 

敵の設定という意味では、波動生命体メザード、反物質怪獣アンチマター、超巨大モノポール生物モキアンといった、SF要素を全開でブチ込んだ連中が好きです。

夢がある!

特に「巨大モノポール生物を地球に送り込めばマントルが引き寄せられて地上はメチャクチャになるやろ」というキレッキレに壮大な作戦が最高。それを阻止するために壮絶な特攻をする石室コマンダーも最高。

 

特撮や映像技術という点ではガイア登場時の土砂巻き上げや1話の水攻めがよく話題に上がりますが、個人的にはニセアグルやゴメノスが見せた「画像加工による不気味な笑み表現」や「問答無用で迫力のあるゾグ第二形態の巨体ダッシュ」に痺れました。

 

あと、最終戦では無数の虫(破滅魔虫ドビシ・カイザードビシ)と戦う訳ですが、オーブTHE ORIGIN SAGAでの相手も無数の虫(ベゼルブ)だったという点にやはりガイアアグルとオーブジャグラーでのハモリを感じてしまいます。

 

 

 

歌と作品テーマがいい

初めてOP主題歌「ウルトラマンガイア!」を聴いたときはインパクトある歌詞に驚きましたが、一気見して毎回聴いていると、歌詞と作品テーマの相似性にかんたんしてまいります。

「ギリギリまでがんばって」「最後の力が枯れるまでここから一歩もさがらない」と、人類が覚悟を決めまくって力を尽くしまくって初めてウルトラマンが現れるという。

最終話なんてまさにそうですもんね。見入ってしまいますわ。

 

同様にEDテーマの「Lovin’ You Lovin’ Me」「Beat on Dream on」 も、「諦めたりしない」「いつかふたりがひとつになる日 星は輝く」という歌詞が、ガイアとアグルの関係性を示しているようでキュン死にしてしまいそうです。

ドラマパートを続けながらEDテーマが流れ出すスタイルもいいものですよね。

 

ウルトラマンガイアという作品は構成、文芸、設定、登場人物、敵、演出、歌と、あらゆる構成要素に「人類が力を尽くす・合わせることで地球(ウルトラマン)の真の力が発揮される」というテーマが貫き通されていたのが素晴らしいし、だからこその完成度の高さだと思います。

 

 

 

 

 

見たいときにウルトラマンガイアを一気見できる 、というのはウルトラマンサブスクの中でも特に偉大なメリットのひとつだと思います。未視聴の方やウルトラマンシリーズに馴染みのない方には特にガイアを勧めたいですね。

 

再来年にはガイアを受け継ぐ新作品が放送されますように。

できたら高山我夢ガイアと藤宮博也アグルがそのまま再登場してほしいなあ。

 

 

 

 

 

「じゃりン子チエ 文庫版16巻 感想 ヒラメちゃん最高やなとなる鉄下駄編」はるき悦巳先生(双葉文庫)

 

じゃりン子チエ文庫版16巻に収録されている長編「赤子編」「鉄下駄編」がともに完成度が高く、とりわけヒラメちゃんの子どもらしい活躍がまぶしい鉄下駄編は映画化できるんちゃうかというくらいにかんたんしました。

 

www.futabasha.co.jp

 

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16巻収録のお話は次のとおりです。

 

  • 秋の夜のプレゼント
  • その名はサトミ
  • 「テプ」「パプ」「テツ」「パパ」
  • 親捜し面接
  • 一枚の写真
  • 「どいつがサトミじゃ」
  • ヨーデル・サトミ
  • 白浜のヨーデル
  • 歌うカルメラ
  • カルメラ親衛隊
  • ヨーデル・サトミ物語
  • ジュニアのマフラーが猿を呼ぶ
  • 今年はええ年にするど!!
  • 垂直跳びの練習
  • 鉄下駄のプレゼント(テツからヒラメへ)
  • 鉄下駄対金メダルシューズ
  • 裸足の道場破り
  • 震源地はチエの家
  • サビた体に千本針
  • 体力測定の朝
  • 体力測定の午後
  • 空手道場の夜
  • 鉄下駄のプレゼント(ヒラメから太郎丸へ)
  • 真夜中の反省会

 

以下、ネタバレを含みますのでご留意ください。

 

 

 

 

 

 

前半はチエちゃんの店の前に赤子が置き去りにされ親捜しを行う長編、

後半はチエちゃんヒラメちゃんマサルの体力測定と、おバァはんvs道場破り太郎丸さんの空手対決が同日に行われる長編が収録されています。

あいだに収録されている小鉄・アントニオジュニアvs箕面のサル軍団もなかなか見応えがありますよ。

 

 

以下、各登場人物の名ゼリフを。

 

 

チエちゃん

それにあの赤ちゃんも……

今はテツにしかなついてないからええけど

その内……もしウチにまでなついたら……

こ…こわ~~

それでのうてもウチ日本一不幸な少女やのに

 

捨て子が自分に懐いてしまったら、赤子背負ってホルモン焼き屋やるんやろかと想像して困惑するチエちゃん。

かなりスジのいい未来予測をしている辺りが悲しい賢さですね。

 

 

 

カルメラ(兄)

♪あなたの下品な流し目に~

コロッといっちゃうわたしがバカよ~

バカ~

バカ~

バカでも今夜は愛されたい♪

 

白浜の旅館にて、団体客相手に謎の歌を披露し大ウケ・大モテするカルメラ兄。

カルメラ兄は何かあるたびに秘めたポテンシャルを発揮して男ぶりを見せつけてくれる引き出しの多さが魅力です。

 

 

 

小鉄&アントニオジュニア

「クソ~あのボス猿とり逃がしたけど今度は許さんど

 行くかジュニア」

「おう」

 

チエちゃんちのおせち料理をめちゃくちゃにした箕面の猿軍団に対し、お礼参りに出向く小鉄とジュニア。

顛末は詳述されていませんが、どうやら二匹で数十匹の猿軍団を蹴散らしボス猿を滝壺で寒中水泳させた模様です。

 

小鉄はふだん争いごとを避けるのに、チエちゃんに被害が及んだ際は本気でケジメをつけにいくのが格好いいですね。

 

 

 

テツ

オジさんがええプレゼント持って来たったど~~

 

ヒラメちゃんが体力測定に向けて一所懸命練習しているのを見て、盗んだ鉄下駄をプレゼントするテツ。

テツはヒラメちゃんファンなので100%善意の行動なのですが、盗んだアイテムをプレゼントするという論外行為がトラブルを招きます。

 

 

 

ヒラメちゃん①

ウチ頑張るで

オッちゃんのためにも頑張らんとあかんねん

 

テツのプレゼントを真に受けて、鉄下駄はいて鍛錬に励むヒラメちゃん。

人の好意の裏側を一切想像することのない純性がヒラメちゃんのいいところです。

 

 

 

太郎丸(道場破り)

……オレの鉄下駄だ

しかしあの子ではない

あのけなげな少女に盗みなど……

 

ヒラメちゃんを見て、自分の鉄下駄をはいていることを認識する空手の道場破りさん。

しかしながらヒラメちゃんは盗みなどする子ではないだろうと同時に見抜いているところが当ゲストキャラの格の高さを示しています。

 

 

 

マサル

やん

やん

あれっ

 

真面目に練習してきたヒラメちゃんと違い、「金メダルシューズ」という分厚いスポンジで大ジャンプできる靴をはいてきたマサル

結果、ジャンプ力があり過ぎてまともに走ることも飛ぶこともできず全ての種目でグダグダボロボロになるマサルの姿が、ギャグ成分少なめの鉄下駄編においてナイスなコメディリリーフぶりなのです。

 

 

 

ヒラメちゃん②

チ…チエちゃん

ウチ今までで一番跳べたわ

 

鉄下駄で下半身が鍛えられ、また、チエちゃんと何度も反復練習したことで、自己ベストの垂直跳びを遂げたヒラメちゃん。

努力が報われて何よりです。

 

 

 

ヒラメちゃん③

そのセンセ昔はいつも鉄下駄はいてたんやて

それでウチが鉄下駄はいて練習してるの見てなつかしいからゆうて色々教えてくれてん

それでセンセその時…出来たら自分もまた鉄下駄はいて練習したいてゆうたから

そやけどウチこの鉄下駄チエちゃんのオッちゃんからもろたやつやし

ウチもろたもんで一人でええカッコしてるみたいやから

 

道場破りの太郎丸さんに鉄下駄をプレゼントしたい、でもテツにもらったものをプレゼントするのはいかがなものか、と悩んでお好み焼屋のオッちゃんに相談するヒラメちゃん。

そもそもテツが盗んできたものを本来の持ち主に返すだけの話なのですが、ヒラメちゃんはそんな経緯を露知らず。

真剣に悩んで、終始下を向いてポツリポツリと相談する姿に胸を打たれます。

 

 

結末としてはテツの悪事が露見して小鉄にやっつけられるオチなのですが、その際もヒラメちゃんはなぜテツが倒れてるのかわからず一人だけ真剣に心配するんですよね。

そして、その姿を見て、道場破りの太郎丸さんもそれ以上何も言わず、鉄下駄をヒラメちゃんから受取り黙って去っていくのであります。

 

太郎丸さんの寡黙なええ男ぶりと、どこまでも汚れなきヒラメちゃんの真心が好対照で映画のような満足度のある長編でした。

非常にクオリティが高いのでおすすめしたいですね。

 

ちなみにおバァはんは太郎丸さんと互角以上に立ち合います。

「実戦で鍛え上げた構え」と太郎丸さんから評されていましたが、今更ながらどんな婆ちゃんやねん。

 

 

 

 

それにしても、いい年になってからじゃりン子チエを読むと、昔は塩せんべいかじってる子くらいにしか思っていなかったヒラメちゃんの魅力がすごい。

いまは子どもたちものんびりしていられない世相で大変そうですけれども、ヒラメちゃんのように一見どんくさくても心根のよさが周囲に伝わるような子がこれからも周囲から大事にされていきますように。

 

 

「じゃりン子チエ 文庫版15巻 感想 お好み焼き屋のオッちゃん(百合根)の火力マシマシ」はるき悦巳先生(双葉文庫) - 肝胆ブログ

「じゃりン子チエ 文庫版17巻 感想 猛威を振るう危険酒"ばくだん"」はるき悦巳先生(双葉文庫) - 肝胆ブログ

 

 

「織田政権の登場と戦国社会 感想」平井上総さん(吉川弘文館 列島の戦国史⑧)

 

列島の戦国史8巻(/全9巻)、いよいよ織田信長さんの登場であります。

現段階の織田信長さん研究を分かりやすく簡明にまとめてくださっていて、いわゆる「最近の研究だと信長さんは……」的な文脈に関心のある方には最適な内容になっていてかんたんしました。

分量も200ページ程度で読みやすいですし出典となる参考文献も整理されていますし、信長さんの研究や創作をやりたい方は読むといいと思います。

 

これまでの列島の戦国史シリーズにおいて各地域が緩やかに統合していったことを見てきたわけですが、織田信長さんやその後の豊臣秀吉さんにより、一気に列島全体の統合へ向かっていくダイナミズムを味わえるのは通史ならではでジンときますね。

 

www.yoshikawa-k.co.jp

 

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16世紀後半、信長は室町幕府に代わる政権を立て全国を統合へ向かわせた。将軍義昭の追放や社会の諸相から織田政権の実像に迫る。

 

 

内容をイメージしやすいよう、細かめに目次を引用いたします。

織田信長の時代―プロローグ

    革命児か平凡な大名か

    信長期の戦国社会

    織田弾正忠家

    若き日の信長

    桶狭間の戦い

    桶狭間後の東海地方

    尾張の国主へ

 

一 室町幕府の再興

 1 足利義昭の上洛計画

    足利義輝の死

    将軍候補の争い

    義昭の上洛計画

    美濃斎藤氏との戦い

    岐阜城への移住

 2 信長と義昭の上洛

    義昭の美濃入り

    六角承禎との戦い

    入京と畿内平定

    義昭の征夷大将軍任官

 3 室町幕府再興と信長

    再興した幕府

    准副将軍・管領

    幕府―織田の二重政権

    天皇からの推任

 

二 織田政権の成立

 1 義昭との微妙な関係

    対立の端緒

    五ヶ条の条書

    両者の思惑

 2 敵対勢力の蜂起

    朝倉氏攻め

    姉川の戦い

    大坂本願寺の蜂起

    志賀の陣

    三好義継・松永久秀の離反

    延暦寺焼き討ち

    三方ヶ原の戦い

 3 義昭追放へ

    十七ヶ条の意見書

    義昭の蜂起

    義昭の追放

    天正改元と譲位

    室町幕府の終焉

 

三 信長の覇権確立への道

 1 発足した織田政権

    信長と「天下布武

    長島と越前の一向一揆

    武田勝頼三河攻め

    長篠の戦い

    朝廷官位の叙任

    徳政と安堵・給与

 2 反信長連合との戦い

    柴田勝家の大名化

    安土築城と家督譲渡

    義昭の再起

    本願寺包囲と木津川口の戦い

    雑賀・根来寺の分裂

    上杉謙信との戦い

 3 本願寺戦争の終焉

    荒木村重の離反

    鉄甲船の建造

    大坂本願寺との和睦

 

四 戦国大名と織田政権

 1 東日本の大名との関係

    東北の大名と織田政権

    上杉・武田・北条氏との関係

    武田氏の滅亡

    北条氏の服属

    織田政権と「関東惣無事」

 2 徳川家康との関係

    徳川氏と武田氏

    松平信康事件

    同盟か臣従か

 3 西日本の大名との関係

    伊賀国の制圧

    丹波・丹後の平定

    山陽の大名と播磨攻略

    山陰の大名と鳥取城の攻防

    宇喜多氏と毛利氏

    長宗我部氏と四国情勢

    九州の大名との外交

 

五 織田政権期の社会と文化

 1 都市・村・城

    信長と京都

    信長と堺

    安土城下町

    織田政権下の郷村

    小牧山城岐阜城

    安土城の特徴

    城郭統制

 2 茶・絵画・文学

    信長と茶の湯

    信長と狩野永徳

    『信長公記』の世界

 3 織田政権と宗教

    講和後の本願寺

    織田政権と高野山

    安土宗論

    信長と仏教

    キリスト教への姿勢

    信長の神格化

 

六 織田政権の構造と限界

 1 信長の政策

    岐阜楽市令

    安土楽市令

    交通・流通政策

    織田政権と銭

    貨幣と石高制

    検地と指出

    城下町集住はあったのか

 2 家臣団の構造

    織田政権の家臣団

    佐久間信盛の追放

    多発する裏切り

    正月儀礼と家臣団

    織田政権の運営形態

 3 信長の死

    朝廷官位と譲位

    本能寺の変

    変はなぜ起きたのか

    中世後期社会からみた本能寺の変

 

信長が残したもの―エピローグ

    戦国社会の終焉

    信長の政権構想

    海外への視点

 

あとがき

参考文献

系図

略年表

 

 

織田信長さんに関わる視点が包括的に整理されていてありがたいですね。

 

一般的なイメージとの違い、最近の研究では~文脈という意味では、

  • 一章の「幕府・織田二重政権」→二章の「織田政権」というニュアンス
  • 六章の「楽市や兵農分離の実像とは」

辺りが注目ポイントでしょうか。

 

 

私個人として一番面白かったのは六章-2の「正月儀礼と家臣団」でして、

安土城を作って以来、安土への家臣団集合による正月儀礼は二回しか行っていない

織田政権の場合、家臣団が一斉に集まって行う恒例の儀式は正月儀礼しか確認できず、増やした形跡もない。信長と家臣団のつながりを再確認する機会は、他の大名・政権と比べても明らかに少なかったのではないか。儀礼が少ないというと、虚礼を廃する革新的な考え方といったようなイメージを抱く向きもあるかもしれないが、儀礼によってもたらされる効果を軽視すべきではない。こうした面からもたらされる織田家臣団の結合の脆さが、先にみた重臣の裏切りをもたらすもう一つの要因になっていたとみられる。

 

という視点は新鮮だなあと感じ入りました。

 

江戸時代は参勤交代に加え五節句や八朔など何かにつけて徳川幕府と諸大名の接点儀式を設けていたことで知られますし、確かに(プレ)統一政権にとってこうした儀式の重要性は軽視すべきでないのでしょう。

コロナ禍で行事や儀式が中止されがちな現代社会にとっても不安が湧く指摘ですね。

 

ただ、こうした儀式の乏しさ、あるいは家臣に起請文や人質を求めないことを以て、織田政権や信長さんの脇の甘さを指摘することはもちろん可能かと思いますが、私としては「勢力急拡大」「新興勢力」な織田政権と他の大名家を比較するのはそもそもあまり適切ではないのではという感想も抱きます。

信長さんたち首脳陣の人格・能力的問題というよりは、プレ統一政権としての実務整備が追いついていなかっただけなんじゃないの、他の大名家が同じようなプレ統一政権になったとしても同じような瑕疵は生じていたんじゃないの、という感触が。(あくまで印象論です)

 

畿内政権の三好家も、重臣を全員集めるような定例儀式はやっていなかった気がしますし(連歌で代替してた気もしますが)、長慶さんと実休さんの仲が微妙になって淡路島で仲直り? したりしてましたし、急速に勢力が広がった新興勢力の家中一体化施策というのはノウハウ蓄積前だったという面もあるんじゃないでしょうか。

日本企業が昭和期を通じて「社歌」「入社式」「幹部集合研修」「社内報」みたいな社内一体化施策を体得していったみたいに。

 

 

まあこの件に限らないのですけど、信長さん率いる織田家はとんでもないスピードで勢力が拡大した集団ですから、天正期の織田家と真に比較対象になる大名家ってあるのかなあという印象があります。

土地に腰を据えて勢力を充実させていた家と、全然知らん土地まで勢力拡げて中央政権の課題にも取り組んでと走り回っていた家との置かれた状況の違いってあるでしょうし。

や、比較整理はとても大事でどんどん研究が進んでいただきたいんですけど、そういう研究成果の上っ面だけ見て「織田家は●●家と比べてこういう施策をしていない、だから信長さんはたいしたことない」みたいなことを口にしてしまう方も世の中にはたまにいらっしゃるので、研究の周知って難しいなあと。

 

この本は、客観的に信長さんについて記載するよう努められていて、極端なアゲもサゲもありませんから、読者の皆さまにはそういうバランス感覚も評価していただきたいですね。

 

 

 

この他、これまでの列島戦国史シリーズを読んできた身からすると、四章で紹介される、各地の主要勢力がどれもこれも織田政権にお近づきになっていく様がたいへん感慨深いです。

明確に時代の変化を感じると言いますか。

当著では各地方の勢力について詳しい説明はされていませんので、興味のある地域の前史についてはシリーズの他の本をお読みになってもいいと思いますね。

 

いち畿内戦国史ファンとしては

この三好政権は幕府から離れた独自の政権で、朝廷を含めた京都の人々もある程度受け入れていたことから、織田信長の政権を先取りした事例ともいわれている(天野二〇一四)。

永禄元年(一五五八)に三好長慶足利義輝の和睦によって京都に幕府が復活するから過大評価は禁物だが、戦国大名たちの意識の上で幕府と将軍の存在がなおも大きかったことを考えると、それを相対化した政権として三好政権の出現は非常に重要であるといえる。

戦国社会の人々がずっと持ち続けていた「室町幕府の将軍(あるいはその候補となる足利一族)がすべての武士の上に立つ存在である」という固定観念を、信長は運と実力で覆していき、日本の政治構造を変えていったのである。信長以前にも三好政権という前例があり、また当初からの目標ではなく天正元年(一五七三)前後の政治情勢による結果論という側面もあるものの、右の意味で織田政権は政治史上重要であるといえる。

 

みたいな前史も一定踏まえた上で信長さんをきちんと高く評価されている文章に好感を抱きますし、

同様に

政策面では、豊臣政権のほうがかなり大胆に実施しており、織田政権はどちらかといえばほかの戦国大名と共通する要素が多い。戦国大名・織田政権と、豊臣政権との間では、段階差があるといえる。ただ、秀吉の政策も、何もないところから突如生まれたわけではない。たとえば豊臣政権が畿内で検地を大々的に実施しえたのは、織田政権下での服従や指出の実施などが下地として重要だっただろう。戦国時代に地域権力として大名が各地に成立し、それらが行った政策を踏まえて、豊臣政権の政策が生まれていったのである。

 

という評価には深く首肯させていただきたいところです。

織田信長さんは、前史から続く流れを更に前へ進めた。

織田信長さんが成し遂げたことがあって、次代の歴史が生まれていった。

信長さんに限らず、こうした通史的な目線はいつも心に置いておきたいですね。

 

 

最後に、信長さんと言えば本能寺の変ですが、当著のラストで陶晴賢さんの方がしっかりした謀反」と大寧寺の変の事前準備の確かさ・完成度の高さを褒めてくれていて嬉しかったです。

信長さんの本で陶晴賢さんが取り上げられると思っていなかったのでポジティブサプライズでございました。

いま大内家関係が大河ドラマになったら陶晴賢さんの配役は超美男が当てられるに違いなく、大内義隆さんとの愛憎シーンは非常に盛り上がるでしょうね。

 

 

 

これから先も織田信長さんがしっかり評価され、実像も虚像も愛される存在でありますように。

虚像であっても本宮ひろ志版やドリフターズ版の信長さん好きよ。

 

 

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小説「破船 感想」吉村昭さん(新潮文庫)

 

吉村昭さんの小説「破船」を読みまして、例によって救いに乏しい過酷な展開を淡々刻々と描写する筆致にかんたんするとともに、帰属する集団に自己が埋没する人間のありようがリアリティあり過ぎてぞくぞくしました。

 

www.shinchosha.co.jp

 

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二冬続きの船の訪れに、村じゅうが沸いた。しかし、積荷はほとんどなく、中の者たちはすべて死に絶えていた。骸が着けていた揃いの赤い服を分配後まもなく、村を恐ろしい出来事が襲う……。嵐の夜、浜で火を焚き、近づく船を坐礁させ、その積荷を奪い取る――僻地の貧しい漁村に伝わる、サバイバルのための異様な風習“お船様”が招いた、悪夢のような災厄を描く、異色の長編小説。

 

小野具定さんのカバーイラストが素晴らしいですね。

暗澹たる海の物語を見事に表現されているように思います。

 

 

ストーリーはほぼほぼ上記あらすじの通りですから、ネタバレを気にせずリアリズム溢れる文章を味わいましょう。

 

 

江戸時代、とある貧しい漁村。

穀物はまともに育たず、漁業と身売りで生計を立てている。

村には秘密があった。

冬季、あえて海が荒れた日の夜に浜で塩炊きをし、火を見て近づいた船を座礁させて、船員を殺害し、積荷を奪い、生計の足しにするのである。

村ではこの略奪行為を「お船様」と呼び、最大の慶事としていた。

 

しかしある冬に訪れた「お船様」には積荷がなく、船内の人間は既に死に絶えていた。

死者は皆、一様に赤い着物を着ている。

流行り病の病人を海に放逐したものとも察せられたが、村人には慶事である「お船様」をスルーする判断はなく、赤い着物を村人に分配した。

 

結果、村には天然痘(疱瘡)が蔓延し多数の死者が発生。

生き残った病人も、再発を防ぐため山へ追うことに。

 

人口が激減した村。

主人公伊作少年の家も、妹が死亡、母・弟は山へ追放となり、一人きりに。

そこへ、身売り奉公に出ていた父親が帰ってくる場面で物語は終了――

 

 

という内容です。

超ビター。

(フィクション作品です。元ネタの江戸時代初期の記録はあるそうですけど)

 

閉鎖社会における独特の因習、

破船略奪行為の因果応報で村が半壊する展開、

「隔離」「祈祷」しか対策がない時代の感染症の恐怖、

等々、読み応えあるポイントが満載の作品でして、分量も200ページちょいですから一晩で読み終えてしまいました。

 

 

 

もともと「漂流もの」作品が多い吉村昭さんですから、逆視点で漂流船を襲う作品を描くと残酷ぶりが一層引き立ちますね。

「仏はいくつあったんだね」

伊作は、岬の上から見下した二艘の小舟を思い浮べながらたずねた。

白湯を飲んでいた母が顔をあげると、

「海に落ちて溺れ死んでいた者が三人。船には傷を負った男をふくめて四人いたが、一人残らず打ち殺した」

と、低い声で言った。

「手向かいでもしたのかね」

伊作は、炉の火に映える母の顔をうかがった。

「初めからさからう素ぶりはなく、命乞いをしていたそうだ」

母は、抑揚の乏しい声で言った。

おそらく水主たちは、神仏の加護を求めて髷も切り落としていたにちがいない。ざんばら髪のかれらが膝をつき、船に乗り込んできた村人に手を合わせて助命を乞うている姿が想像された。

「情などかけてはならぬのだ。かれらを一人でも生かしておけば、災いが村にふりかかる。打ち殺すことは御先祖様がおきめになったことで、それが今でもつづけられている。村のしきたりは、守らねばならぬ」

母の眼に、険しい光が浮かんだ。

伊作は、神妙な顔でうなずいていた。

 

吉村昭さんが描いた大黒屋光太夫さんや長平さんたちももしかしたらこういう末路を辿っていたのかもしれませんし、彼らの小説で描かれた悲惨な漂流後にこんな展開が待っていたとしたらと想像すると救いがなさ過ぎて黙然とするばかりであります。

 

 

私としては、この作品は江戸時代の寒村を舞台にしたものではありますけど、特殊な(ブラック等)企業や(カルト等)集団にも通じるような、「自己が集団に埋没する、運命共同体的小社会の恐怖」が充分な現代性を有していて怖いな、と痺れました。

 

お船様」は、村にとっては慶事ですが、世の中からすれば「罪悪」であることは言を俟ちません。

そんな中、閉じた村で生まれ育った主人公伊作少年が、ずっと村にいたい、隣村等の他の地域には行きたくない、と感じるプロセスがリアリティあり過ぎでぞくぞくするんですよね。

ある種の洗脳教育小説じゃん、となります。

周旋人の家の土間で一泊してもどったが、再び峠を越えて山路から村を見下すことができた折の深い安らぎは忘れられない。かれは、村以外に自分の生きる場所はないことを実感として感じた。

廻船問屋の男たちが、行方知れずになった船の行方を探っているという話を聞いてから、隣村が得体の知れぬ恐しい地に思えてきた。隣村は島の一部で、さらにその島も海を越えた果しなく広い地に属しているという。それらの地には一定の掟があり、村の古くからうけつがれた定めとは異なったものらしい。

村の死者は、海の彼方に去り、時を得てその霊が村の女の胎内にやどるというが、霊は村以外に帰る地はない。慶事が悪事とされる定めの異なった地に戻るとすれば、ただ戸惑うばかりだろう。今後、所帯を持てば、当然、塩売りなどで隣村におもむかねばならぬが、出来るかぎり足を向けたくない。秩序立った定めの守られている村に、身を置いていたかった。

 

環境の違いが、生計手段の違いを生み、やがて倫理や信仰の違いを生んでいく。

弱く小さく閉じた社会で生きる者は、他の社会で生きることが恐ろしくなる。

どちらの社会で生きる者も、定めに従って生きているだけなのだけれど。

 

こうした人のありようを淡々と語られると、かなしい気持ちになりますね。

多様化が求められる現代にこそ、あえて読んでおきたい作品のように思います。

 

 

経済や技術の発展が、個人と個人間、社会と社会間での価値観の融和を促し、人類総体での安心量増加に繋がっていきますように。

 

 

 

 

「ウィザードリィ#7 久々攻略の感想および考察(種族、ゴローの間等)」PS ガーディアの宝珠版

 

マイフェイバリットゲームであるウィザードリィ#7を久しぶりにプレイしまして、やっぱり楽し過ぎてこのゲームは最高やなとかんたんし、もう一周プレイしようか迷っているところです。

 

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正式名称は「CRUSADERS of the DARK SAVANT」、通称CDS

ダーク・サヴァントという悪のSFボスの手先となって攻略してこい的なニュアンスでしょうか。#6でベラさんを殺害してエンディングを迎えた方なら、そういう展開でオープニングを迎えるので分からないでもありません。

 

ストーリーは#6からの続きもので、#6ラストで「コズミック・フォージ」という書いたことがなんでも実現するペンを発見するところから始まります。

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コズミックフォージを管理しているアレスエイデスさんの要望で、「アストラル・ドミナ」というどんな生命でも生み出せる宝珠を探しにいくことになった冒険者一行。

剣と魔法の西洋ファンタジーだった#6から、いきなりSFアドベンチャーな#7に切り替わって脳が混乱したプレイヤーも多かろうと思います。

 

 

今回のラスボスはこちら、ダーク・サヴァントさん。

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オープニングでラスボスを紹介してくれる親切仕様。

ゲーム内容はまったく親切ではありませんが。

 

彼の正体的なネタバレは#8に持ち越すといたしまして、以下、#7のネタバレはふんだんにございますのでご留意くださいませ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パーティは次のとおりです。

いちばん難易度の高い6人パーティ&転職なしで久しぶりにクリアしました。

 

侍の斬月さん。

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#7はキリジュツゲーなので、キリジュツと命中率に優れる侍は強力な職業です。

中盤、まともな刀が手に入らないのは玉に瑕ですが……。

 

 

 

モンクのハチさん。

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#6に続いてモンクは強力です。

スネークスピードも覚えて、先制で敵の首を刎ねる切り込み隊長に。

 

 

 

ヴァルキリーのミリアムさん。

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バランスよく強いヴァルキリーはとても役に立ちます。

なお、#7ではファイターは2倍のダメージを受ける謎特性があるので使用してはいけません。

 

 

 

レンジャーのロバートさん。

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#7では弓矢が役に立たないので、ひたすらスタンロッドで敵を麻痺らせる役です。

ユビサキワザやレンキンジュツで幅広く役に立てるのはいいですね。

 

 

 

ビショップのドミニクさん。

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パーティ随一の魔法キャラ。

転職なし前提であればビショップは便利です。

充実した呪い装備の数々も地味に強力。

 

 

 

最後はアルケミストのアルフレッドさん。

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サーマルパイナップル(核爆発手榴弾)を投げ続ける役なので、敵撃破数が大変なことになっています。

序盤から重要呪文「BLD.フラッシュ」「スリープ」「コンフュージョン」「アスフィジェーション」で大活躍できるので、アルケミストはおすすめですよ。

「DE.ポイズン」も意外なボスを即死させられたりして便利ですし。

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#7はレベルゲーのため、攻略効率だけを考えたら経験値を稼げて荷物も分散できる2~3人パーティが一番楽なのですが、#7ではアイテム種類が豊富なので6人パーティの方がプレイしていて楽しかったりするんですよね。

 

どういうパーティにするかはプレイするたびに一番悩むポイントです。

6人パーティでラストフロアのロボットやゴローの間ボスにほどよく苦戦するのも楽しいし、少人数でレベル100台にして強敵どもを瞬殺していくのも楽しいし。

こういうことを書いていると、一人旅とか二人旅で再プレイしたくなってきて困ります。いいロールプレイングネタが思い浮かんだらまたキャラメイキングしてしまうかもしれない。

 

(以前は三好三人衆でプレイしたこともあります)

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#7は旅する世界が惑星全土に及ぶため、従来作品よりプレイ時間が相当かかります。

船や、SF兵器的な要素も追加されていて、従来作品のファンからすれば違和感をぬぐい切れない気もしますが、慣れると#7のチャンポンスケール感はとてもいいものだと思うんですよね。

 

 

船で大海原を進みます。

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ちなみに#7ではスイエイスキルはとても重要で、スキルが10以上ないと水のマスに入った瞬間「イヨヨ」「ファー」と謎の悲鳴をあげて死亡します。

スキル100でも7-8マス泳ぐのが限界ですので、船が手に入った時のやったぜ感はすごいものがあるんですよ。

 

 

 

最強の武器「ライト・ソード」。

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「光の柱を発する取っ手」。要はライトセーバーですね。

素でめっちゃ強い上、終盤のロボット敵に倍打だったりします。

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ムラマサより倍近く強いライト・ソード、ドラゴンや悪魔よりも強いロボット……となると受け入れられないファンタジーファンも多いかもしれません。

#7はハマる人にとっては本当に面白いんですけど、こうした点で好き嫌いが別れるのもやむを得ない気がしますね。

 

電脳的な要素も普通に登場しますし。

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最終的にパーティはアストラル・ドミナを無事に発見します。

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アストラル・ドミナを横取りしようとするも、台座から動かせなくて激高するダーク・サヴァントさんがかわいいシーンです。

 

 

ラスボス戦の難易度はそれほど高くありません。

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その後はマルチエンディング形式で、今回は憎めない勢力であるティーラングについてみました。

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既にアストラル・ドミナはダーク・サヴァントさんに持ち去られてしまい#8に続くという場面なのですけれども、それはそれとして抗争を続けているアンパニ・ティーラングには参るね感があって好きなエンディングです。

惑星ガーディア、これから先も平和になることはなさそうですね。

 

 

こういう味わい深い種族間対立等が#7の魅力だと思いますので、以下考察を。

 

 

考察①:ガーディア土着種族の存在意義

惑星ガーディアには土着の五種族と、宇宙から到来したアンパニ族、ティーラング族が登場します。(厳密には他にも巨人や魔女やロボット等もいますが省略)

 

土着の五種族は、ガーディアとともに天才科学者「フォーンザング」さんがアストラル・ドミナの力で生み出した方々です。

彼らは「異星人が来るとき、この世は滅びるであろう」という予言を踏まえ、主人公やアンパニ・ティーラングの到来を受けて混乱・戦乱状態にあります。

 

ティーラングは目的達成には手段を選ばない侵略商人で、ダーク・サヴァントと手を組んでガーディアに侵攻してきています。どう見てもエイリアンですが意外と気さくな面もあります。

アンパニはティーラングのライバル種族で、公平・モラルを重んじる軍隊的商人です。どう見ても米軍です。

 

ここでは、フォーンザングさんが土着五種族をどのような意図で生み出したのかを考察したいと思います。

まずは各種族のかんたんな紹介を。

 

ゴーン族

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ゴーン族は強力な武士団種族で、ダーン族とムンク族の戦争を抑止するほどのガーディア最大戦力として位置付けられています。

しかしながら、星から来た者どもの策略で大魔法使いムラカトスさんが暗殺されてしまったり、帝国が内部分裂状態に陥ったりと、ゲームプレイ時点では往年の力を失ってしまっている模様です。

なんとなく、西洋諸国の植民地戦略に翻弄されたアジア・アフリカの強国がモデルになっているような気がしないでもありません。

聖堂の島でゴーン姫が葬られていたりアンゴーン・大名がかなり強かったりするところから見て、かつては相当強大な力を誇っていたっぽい。

 

 

 

ダーン族

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身体は貧弱ながら、瞑想・精神修養で魔法の力に優れた種族です。

首領マグナ・ダーンさんのもと一枚岩に結束しているのが強みですが、肝心のマグナ・ダーンさんの徳が低いのが残念。

末端の方々はいい人たちなんですけどね。

なんとなく、キリスト教で異端とされた宗派あたりがモデルになっているような気がしないでもありません。

 

 

 

ムンク

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強靭な肉体と怪しげなドラッグに定評のある種族です。

アストラル・ドミナの本質に肉薄するような「夢」を見ることができる辺り、ポテンシャルはそうとうある種族なのですが、どうも全体的に個人主義的で種族としてのまとまりがありません。

何もかもがダーン族と真逆で彼らとは犬猿の仲。また、ゴーン族にとっては「食料」視されているようです。

なんとなく、西洋人の目から見た日本の「禅」「忍術」やイスラム神秘主義がモデルになっているような気がしないでもありません。

 

 

参考:ムンク族のもとで見られる「夢」。

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単におクスリでラリッてるだけかもしれませんが、ここで見られる夢はアストラル・ドミナの力や、コズミック・ロードの役割(#8)にかなり近いと思われます。

 

 

 

ラットキン族

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ネズミ人間ラットキン族。

盗賊を生業とするマフィア集団で、ティーラング族やダーク・サヴァントにも要領よく取り入って漁夫の利を得ようとしています。

なんとなく、イタリアンマフィアやメキシカンマフィア等、アメリカ裏社会がモデルになっているような気がしないでもありません。

土着種族ながらティーラングの宇宙船を強奪して#8の世界に進出し、ダーク・サヴァントにも一泡吹かすという痛快な面が魅力ですが、その本質は暗黒街の住人でしかないので怖い怖いです。

 

一族のブラインド・メイスさんがケーン・オブ・コープス(骸の杖)という#7最凶の武器をお持ちということで著名ですが、キャラ的にあまり彼と戦いたくないんだよなあ。

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どうもプレイ時点では、ドン・バルローン率いるラズーカファミリーが、ブラインドメイスさん率いる盗賊ギルド勢を駆逐した後という設定っぽいんですよね。

#8でバルローンさんが「ケーン・オブ・コープス」を所持している辺り、バルローンさんはガーディアを離れる前のケジメとしてブラインドメイスさんを始末してきたのでしょうか。

単純な実力ではブラインドメイスさんの方が強いので、マフィアお得意の人質作戦とかでブラインドメイスさんを嵌めたのかもしれませんね。

 

 

 

ヘラゾイド

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エアスクーターに乗って移動する女性種族です。

#8に登場する種族「ハイガルディ」の末裔っぽい。

どうやって生殖しているのかは謎ですが、実際に数が少ないらしく、ドラゴン・マウンテンの上でひっそりとフォーンザングさんの遺産を守っています。

モデルどうこうより、ファンタジー世界におけるエルフの役割をSF世界に投影したような存在ですね。

 

ちなみに画像のジャン・エッテさんも#8に登場しますが……。

 

 

 

まとめ考察

ダーン族とムンク族は極めて仲が悪い。

ゴーン族は強大だが外からの謀略に弱い。

ラットキン族は混乱を助長させる存在。

ヘラゾイド族は現世不干渉で、過去の遺産を守るだけ。

そして、これら五つの種族すべてに通じなければ、アストラル・ドミナに至る謎を解くことはできない。

 

このように趣味が悪い設計をフォーンザングさんはしていったように映ります。

外から来た者たちの存在なしに、土着の五種族からアストラル・ドミナに到達する者が登場するとはとても思えません。

逆に、外から来た者たちがアストラル・ドミナを発見しフォーンザングさんの後を追うなら、これら在地の五種族に関わる試練を見事にクリアする必要がある訳です。

ゲーム的にはともかく、世界観的には「ガイコウジュツ」が超重要な気がしますね。

 

要は、ガーディア土着の五種族は、フォーンザングさんにとって後進に対する「試練」「課題」でしかないように見えるんですよね……人権感覚の欠片もないと言いますか、扱いがロボット兵と変わらないと言いますか。

アストラル・ドミナやコズミック・フォージを使いこなすコズミック・ロードにとっては、そのような感傷は取るに足らないことでしかないのかもしれませんけど。

 

それだけに、ラットキン族がガーディアを離れて好き勝手やり始めるのがウケるんですよね。

生まれがどうあれ、大事なのはタフに生き抜くバイタリティーですわ。

 

 

 

考察②:ゴローの間ってなんなの

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ガーディアの種族や生物と同様、ゴローの間のボス(神竜・オメガみたいなもの)もフォーンザングさんの手で生まれた存在なのでしょう。

なんせアストラル・ドミナの力があれば無尽蔵のエネルギーを持つ生き物もつくることができるらしいですし。

 

ゴローの間のボスたちは次の方々です。

弱い順に並べています。

 

 

ラーセーレーテップさん。

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はじめのダンジョンのボスが再登場。雑魚です。

ゴローの間の財宝を1個はプレゼントしてあげるよ、という救済措置なのでしょう。

 

 

ホラゴースの悪魔さん。

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たいして強くありません。レベル30もあれば普通に殴って倒せます。

 

 

ダルボレスの精霊さん。

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同じくたいして強くありません。レベル30もあれば普通に殴って倒せます。

ここまでは6人パーティでも難易度低めです。

 

 

地獄よりの使者さん。

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HP6698を誇る超タフな芋虫です。

まともに戦うと面倒ですが、魔法「ウィークン」でレベルを下げられますので、重ねがけしてから殴ればクリティカルや麻痺が発動して楽勝です。

 

 

千の目の怪物さん。

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レベル99、HP9099の化け物クラゲです。

まともに戦うと状態異常を喰らいまくって殺されますが、この方も「ウィークン」が効くので重ねがけしてから殴ればクリティカルや麻痺が発動して楽勝です。

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最後に第9世界の悪霊さん。

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レベル60の上、ACがめっちゃ低くてこちらの攻撃が当たりません。

しかも敵の攻撃は99の固定ダメージ&猛毒で、レベル40程度では数発で殺されます。

 

倒すにはこちらもめっちゃレベルをあげるか、

弱ゴジリ(弾避け)召喚&命中率アップ魔法&回避率アップ魔法をかけまくってリセットしながら運頼み撃破を狙うか、

ということになります。

弱ゴジリさんも数ターンで殺されるのが超怖い。

 

第9世界の悪霊という名前もおしゃれです。

名の通り99ダメージを与えてきますが、これでレベルも99だったりしたら伝説になっていたでしょう。

 

というか名の通り99ダメージを与えてくるという時点で、存在がややメタ的な概念に踏み込んでいる気がします。

やはりラットキン族の設計はフォーンザングさん的にもやり過ぎたところがあったのかもしれませんね。

 

 

 

以上のゴローの間の怪物ども、やはり#7の世界観的には過剰な強さです。

ダーク・サヴァントさんより明らかに強いし。

フォーンザングさんが喧嘩しても勝てないんじゃないの。

 

彼らの打倒がアストラル・ドミナ獲得上必須でないことからしても、ゴローの間は「アストラル・ドミナへの試練」ではなく「アストラル・ドミナでつくったらやり過ぎちゃった生物と宝物を保管しておこう。アストラル・ドミナの使い途を誤るとこうなるぞ(戒め)」ということなのではないかなあと思っています。

 

 

 

考察③:ベラさんはグレーター・ワイルドで何してるの

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#6の裏ボス、黒龍ベラさん。

彼はアレスエイデスさんを追って#8の世界へ向かったはずなのですが、なぜか#7のグレーター・ワイルドという何もない荒野で出会うことができます。

しかも問答無用でこちらを攻撃してきて、倒すとベラさんの家族の形見を落としていくという「何してんねん」感満載な感じで。

 

 

オマケ要素と受け取ることも出来ますけれども、彼が何しているか何らかの理由付けをしてみたいと考え、思い出したのが#6のこのセリフ。

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ベラさんの宇宙船の燃料、そういえば恐竜でした。

 

 

そして、グレーター・ワイルドといえば#7最強敵のこちら強ゴジリさん。

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もう分かりましたね。

ベラさんはグレーター・ワイルドで恐竜狩りをして燃料を補給していた。

 

ただ、強ゴジリさんやレックスさんは超強敵なので、ベラさんもバーサークして実力以上のものを出さないと倒せませんので。

(顔見知りの)主人公パーティが話しかけても気づかずに攻撃してきた、ということなのでありましょう。

 

ベラさんと#7で出会うこと自体が不幸な事故やったんや……。

 

 

 

 

 

以上、書いても書いてもキリがないほど、#7に対して感じることが溢れてきます。

王道ではまったくないのに、ユーザービリティも最悪なのに、こうも惹かれるのは独特過ぎる世界観とプレイ感覚のおかげ。

 

ハードルは極めて高いものの、これから先も#7にハマる奇特な人が現れますように。

プレイしたらがっかりしたわという人も多いと思いますけどご容赦くださいまし。

 

 

「ウィザードリィ#6 久々攻略の感想および考察(王妃・レベッカ・ベラ・ゾーフィタス等)」SFC 禁断の魔筆版 - 肝胆ブログ

「ウィザードリィ#8 久々攻略の感想 アンパニ・ティーラング、そしてベラの未来」日本語版バニラ - 肝胆ブログ

 

 

「旅をする木 感想 命を見つめる姿勢、吉村昭さんと共通するもの」星野道夫さん(文春文庫)

 

星野道夫さんのエッセイ「旅をする木」をあらためて読んでみたところ、一つひとつの命を見つめるやさしい視線と、吉村昭さんの小説にも通じるような透徹とした姿勢とを感じてかんたんしました。

 

books.bunshun.jp

 

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広大な大地と海に囲まれ、正確に季節がめぐるアラスカで暮すエスキモーや白人たちの生活を独特の味わい深い文章で描くエッセイ集 

 

 

 

アラスカをフィールドに活躍されていた写真家 星野道夫さん。

彼の名前を知らなくても、写真は見たことがある、という方も多かろうと思います。

 

↓参考:グーグル画像検索「星野道夫

星野道夫 - Google 検索

 

 

 

私の場合は、かつてANAJALかの機内誌で彼のエッセイを読んで、感銘を受けたことが強く印象に残っています。

 

 

さいきんでは、楽しい漫画「働かないふたり」で当著が推されていて、あらためて読んでみたくなった次第。

「働かないふたり 14~20巻 感想 旅をする木」吉田覚先生(くらげバンチ) - 肝胆ブログ

 

「働かないふたり」では、当著について「心をニュートラルにしてくれる」「分かっていたつもりのことが、実は分かっていなかったことを教えてくれる」「行ったことのない場所へ行きたくしてくれる」本であると紹介されていまして、上手いこと言うなあとかんたんいたしました。

 

 

星野道夫さんの文章は、「自分の可能性がいかに大きいか」「こことは違う世界が確かに存在する」といった実感を与えてくださりますので、若い方に特におすすめです。

 

その上で、特に若くはない自分がこのエッセイを読んでみて、感じ入った箇所をいくつか紹介してみたいと思います。

 

 

赤い絶壁の入り江

この旅の間中、ふと気がつくと、友人のOのことを考えています。今ここにいたらいいのになと、新しい風景に出会うたびに思います。不慮の事故で子供を失い、深い挫折感の中にいるOに、深い原生林に囲まれた東南アラスカの内海を見せてあげたいのです。

 

こうしたやさしさが染みる歳になったことを実感します。

 

 

 

北国の秋

秋は、こんなに美しいのに、なぜか人の気持ちを焦らせます。短い極北の夏があっという間に過ぎ去ってしまったからでしょうか。それとも、長く暗い冬がもうすぐそこまで来ているからでしょうか。初雪さえ降ってしまえば覚悟はでき、もう気持ちは落ち着くというのに……そしてぼくは、そんな秋の気配が好きです。

 

人間で言えば、40-50代くらいの感覚に近いような気がします。

 

 

 

ザルツブルクから

ぼくはアラスカを旅する中で、人間の歴史をはかる自分なりのひとつの尺度をもちました。それはベーリンジアの存在です。最後の氷河期、干上がったベーリング海モンゴロイドが北方アジアから北アメリカへ渡ってきた、約一万年前という時間の感覚です。いつの頃からか、その一万年がそれほど遠い昔だとは思えなくなりました。人間の一生を繰り返すことで歴史を遡るならば、それは手が届かないほど過去の出来事ではありません。いやそれどころか、最後の氷河期などついこの間のことなのです。

そんなふうに考えていたからか、ヨーロッパの歴史が実に最近のことのように思えます。ルネサンスの時代の建物を前にして、それがわずか四、五百年前のものであることに愕然としてしまうのです。人間の歴史の浅さというものに対してでしょうか、あるいは、人間の暮らしが変化している速さに対してでしょうか。

 

自分の視座について引き出しを増やすのであれば、大自然や地学、あるいは宇宙の歴史等に対して関心を持つといいのかもしれませんね。

 

 

 

歳月

Tが死ななくても、ぼくはおそらくアラスカに行っただろう。しかしこれほど強い思いで対象に関われただろうか。自分だけではない。それは彼をとりまく幾人かの人生を大きく変えていった。かけがえのない者の死は、多くの場合、残された者にあるパワーを与えてゆく。

 

生生流転がもたらすパワーや尊さ、輝き。

これこそ当著がいう「旅をする木」の実体なのでしょう。

 

 

 

海流

以前、クリンギット族の友人がふともらした、忘れられない言葉がある。

「おれたちには日本人の血が混じっているかもしれない。そんなことを想像させる口承伝説があるんだよ」

 

黒潮と漂流がもたらす、日本とアラスカの繋がり。

記録に残っていない無数のドラマが存在した可能性を感じさせてくれて、茫洋とした気持ちになります。

 

 

 

白夜

「ギフト(贈り物)だな……」

と、ドンが言った。

あたりが少しずつざわめいてきた。やがてぼくたちは、金色に光るワタスゲの海の中で、数千頭カリブーの群れに囲まれていった。

 

まこと幻想的な場景を、「ギフト」と表現する相棒のドンさん。

「ゲット」でなく「ギフト」と言えるのがいいですね。

ドンさん、NHK星野道夫さん父子のドキュメンタリーでも登場していまして、想像以上に渋いおじさんで素敵でした。

 

 

 

カリブーのスープ

人はその土地に生きる他者の生命を奪い、その血を自分の中にとり入れることで、より深く大地と連なることができる。そしてその行為をやめたとき、人の心はその自然から本質的には離れてゆくのかもしれない。

 

人と土地との繋がりを、生と死の連なりから見つめている点が素晴らしいですね。

 

 

 

 

 

 

いずれも、やさしさや敬意のこもった、命の輝きを見つめているような文章です。

 

あくまで私の素人感想ですが、星野道夫さんさんのこうした姿勢は、吉村昭さんの作品に通じるものがあって感じ入ります。

「羆嵐 感想」吉村昭さん(新潮文庫) - 肝胆ブログ

「死顔」吉村昭さん(新潮文庫) - 肝胆ブログ

 

それぞれアラスカの大自然、人の近現代史と、主として取り扱う題材は異なりますが、見よう・描こうとしていたものは近いんじゃないかなあ。

結果として、両者とも羆や漂流記に関心を抱いているのも興味深いところです。

 

 

 

 

星野道夫さんの遺した作品がこれからも流転し、多くの方々へパワーをもたらす「旅をする木」でありますように。

 

 

 

 

「大友義鎮 国君、以道愛人、施仁発政 感想」鹿毛敏夫さん(ミネルヴァ書房)

 

ミネルヴァの評伝「大友義鎮」が発売されまして、義鎮(宗麟)さんの内政・外交・文化面の知らなかった事績が豊富に紹介されていてかんたんしました。

一方、義鎮さんの生涯・合戦・家臣・ライバル(島津家除く)についてはあまり触れられていないのは素直に残念です。当著はとても面白かったので、その辺りを解説する後編も欲しいところです。

 

https://www.minervashobo.co.jp/book/b548715.html

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大友義鎮(おおとも・よししげ:1530年から1587年)戦国大名法名「宗麟」。
北部九州の守護公権力として領土と領海の統治に邁進し、ヨーロッパから訪れた未知なる宗教の宣教師や、外交交渉のために来日したアジアの国家使節に果敢に向き合った義鎮。国を超えて活躍したその生涯に迫り、事績と人間性に新たな光を当てる。

[ここがポイント]
◎ 混迷せるキリシタン大名=大友義鎮という悩ましいイメージを払拭し、最新研究成果に基づいた新しい「大友義鎮」像を描く。
◎ 「日本」という枠を超えて生きた真の姿に迫る。

 

はじめに

序 章 大友氏の史的背景と研究史

第一章 大友氏の歴代当主
 1 鎌倉期の当主
 2 南北朝・室町期の当主
 3 戦国期の当主

第二章 領国の拠点
 1 豊後府内の歴史的構造
 2 大名館の建設と都市づくり

第三章 領国の統治
 1 インフラ整備と夫役動員論理
 2 大内―大友連合の樹立と挫折

第四章 経済政策
 1 衡量制政策の展開
 2 豪商との相互依存関係

第五章 硫黄・鉄砲と「唐人」
 1 硫黄輸出と鉄砲国産化
 2 渡来「唐人」の経済的掌握

第六章 建築と絵画への造詣
 1 大名館・寺院の建設と障壁画
 2 唐絵の蒐集と贈答

第七章 アジア外交と貿易政策
 1 対明朝貢倭寇的活動
 2 臼杵丹生島城の築城目的

第八章 西欧文化の受容と評価
 1 カトリック世界との交流
 2 「キリシタン大名」像の虚と実

第九章 東南アジア外交の開始と競合
 1 種子島琉球・東南アジアとの交易
 2 対カンボジア外交権をめぐる抗争

終 章 義鎮の政治姿勢と経営感覚

おわりに
参考史料・文献
大友義鎮略年譜
人名・事項索引

 

 

一次史料や発掘成果をベースに大友義鎮さんの事績を再評価することを目的にしており、逸話的な義鎮さんの人物像である「酒宴乱舞・好色に浸っていろよき女に財宝を与え傾国に至る」「邪宗門に入信して仏家・僧坊・宗廟・神社、一々破却させる」の誤解を払拭せんと務めておられます。

同時に、大友氏歴代の事績の積み重ねや、豊後府内の発展、大内―大友連合の成立、豪商との結合、建築・絵画への造詣、そして明・東南アジア・西洋との独自外交等々、大友義鎮さんの誇るべき視点を次々と紹介いただける訳ですね。

 

こうした「歴史の敗者ということもありネガティブな評価が続いていた人物を、科学的な研究手法で以て再評価していこう」という流れは、三好家や畿内戦国史好きの私としてはシンパシーを感じます。

宮下あきらさんによる大友宗麟さんイラストが世に出たあたりから「大分県では大友宗麟顕彰が盛り上がってきているらしい」みたいな話を時折耳にしていましたので、ようやく最新研究の一端に触れることができて嬉しい限りです。

 

↓(参考 ※当著と関係ありません)宮下あきらさんの宗麟イラスト。漢濃度がすごい。畿内もこういうのほしい。

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本の内容に戻りまして、特に印象に残った点をいくつか。

 

  • 大友氏十五代親繁さん(1411~1493)の事績「雪舟さん支援」「豊後産硫黄の対明輸出成功」、すごいですね。親繁さん本人は質素な邸宅で暮していたというのも好感度が高いです。
  • 第二章「領国の拠点」、発掘成果や文献を駆使して府内(大分市)の発展過程を解きほぐしているパートが素晴らしいですね。中世都市がどのように栄えていくかの一事例として非常にクリアなイメージを描けますし、実際に大分市を訪れて散歩してみたくなります。
  • 大寧寺の変について、陶隆房さんと大友義鎮さんが、あらかじめ変の実行と晴英(義長)さんの山口入りについて密約を交わしていたとする一次史料ベース考察。しかも、海路で晴英さんが山口入りすれば大内氏家祖の伝承と整合して演出的によかろうという分析が興味深いです。
  • 九州商人と畿内(堺)商人の友好的繋がり事例。
  • 狩野永徳さんは、三好長慶さん菩提寺大徳寺聚光院での襖絵制作(1566)と、織田信長さん居城安土城での障壁画制作(1576)との間、大友義鎮さんのところを訪れて明人等と交流したり、丹生島城の書院の襖絵を製作したりしていた(1571)。
  • 島津家との「九州覇者」としての海外外交争いがとても面白い。島津義久さんが大友宗麟さんの派遣した対カンボジア外交・交易船を分捕った挙句、カンボジア王に「九州覇者は島津家ですさかい」と使節を派遣しなおしていた事例、はじめて知りました。
    その上で、大友家や島津家等の九州各家が蓄積した海外外交ノウハウが、豊臣家・徳川家という中央政権へ一元的に引き継がれていったという指摘はまことに意義深いものを感じますね。
  • あらためて大友義鎮さん(や九州大名)の独自の海外外交を見ていると、戦国大名をひとつの地域国家的存在と捉える見方にも説得力が増すかもしれない。この辺りは軽々に定義しにくいところではありますけど。

 

等々。

 

一方で冒頭にも書いた通り、有名な家臣方のご活躍ですとか、毛利家や龍造寺家や島津家との合戦や調略ですとかは当著には登場いたしません。ぜひ当著と同じくらいのクオリティでその辺も今後紹介していただけるとありがたいですね。

 

 

歴史コンテンツといえばコーエー社ですが、さいきんの信長の野望シリーズでも大友義鎮さんは伝統的な「女好き」「エイメン!」「げえっ、道雪!」といういじられ方を引続きされている一方で、他家への外交・調略上手っぷりも特筆されることが増えてきていて、クリエイター方が大友家研究の動向に注目していることが伺えます。

 

引続き大友家の研究が世の中に浸透していきますように。

それを受けて龍造寺家等の研究も進みますように。